岡藤良敬論文「造石山寺所、公文案帳の復原」『九州文化史研究所紀要』 27号、 pp.151-196, 1982-03-31は大変に興味深い。
岡藤先生の論文の考証は手堅く、どれ一つ手に取っても巧みな職人技であり、後進が刈り取るぺんぺん草さえ残っていないほどである。
- 福岡大学総合研究所報(第100号) (1-414) 1987年
- 『律令制と古代社会』所収(東京堂出版) (1-27) 1984年
- 『古代学叢論』(角田文衛博士古希記念)所収 (397-411) 1983年
- 『九州史学』 73(1-15) 1982年
- 『続律令国家と貴族社会』所収(吉川弘文舘) (215-259) 1978年
- 福岡大学創立40周年記念論文集 (1-37) 1974年
- 九州大学文学部・史淵(第102輯) (1-34) 1970年
などである。
「その中で、760年代に、近江国に造営された石山寺の造営史料が、大量に正倉院文書の中に現存していることは 注目に値する。
この造営史料は、報告書である告朔解の類と、銭・食料・材料などの日々の出納記録を記した諸帳に大きくはわけ られるが、その内容は、造営の具体的な経過、労働力構成、材料・用具などの調達や使用状況、また銭や食料の調達 や給付内容(財政運用) にいたるまで知ることができる精細さをきわめたものである。 したがって、この石山寺という、中小規模寺院造営史料の徹底的な分析によって、その全体構造を史料の上で知る ことが困難な、少なくとも、奈良時代に成立した造営組織の性格を知る手掛りがあたえられる。
しかもそれだけにとどまらず、石山寺造営史料の紙背には、石山寺の次によく残っている、法華寺阿禰陀浄土院金 堂の造営史料、また古代の絵画関係についての貴重な史料である東大寺大仏殿の彩色についての記録、および今日部 分的に残っている造東大寺司の報告書(告朔解案)や、東大寺東塔所関係の文書などが記されており、表・裏の文書 をあわせてこの文書群は、古代の建築・彫刻・絵画・工芸品などの、造営・製作の実態をとらえるための貴重な史料 なのである。」(161頁)
と記す。
いま、ここでは特に「東大寺大仏殿の彩色についての記録」を取り上げて、考察を進めたい。
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