2026年9月21日月曜日

大学寮・陰陽寮・主計寮・主税寮・内匠寮・木工寮・近衛府・衛門府・兵衛府などの人事情報

 大学寮・陰陽寮・主計寮・主税寮・内匠寮・木工寮・近衛府・衛門府・兵衛府などの人事情報

系列主な対象官職件数
大学寮大学頭・大学助・大学員外助21
陰陽寮陰陽頭・陰陽助9
主計寮主計頭・主計助28
主税寮主税頭・主税助33
内匠寮内匠頭・内匠助・員外助15
木工寮木工頭・木工助22
近衛府大将・中将・少将・将監等16
衛門府督・佐17
兵衛府左右督・左右佐・員外佐32
合計193

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① 大伴宿禰潔足

宝亀11(780)4月20日
左兵衛督

↓ 5年後

延暦4(785)8月14日
近衛中将

↓ 3年後

延暦7(788)3月21日
衛門督

つまり、

左兵衛督 → 近衛中将 → 衛門督

である。

しかも三つとも今回の「軍事・警衛系」9系列である。

② 紀朝臣木津魚

延暦8(789)8月12日
右兵衛督

延暦9(790)3月26日
内匠頭

同日

衛門督

つまり、

右兵衛督 → 内匠頭+衛門督

である。兵衛府 → 内匠寮 → 衛門府という、軍事系官司と宮廷技術・生産系官司を跨ぐ人事移動が見えてくる。「軍事官司の人間は軍事官司だけ」という単純な専門職モデルでは説明できない事例である。

③ 宍人朝臣継麻呂

こちらはもっと単純に

宝亀元(770)12月28日
主計頭

↓ 7年後

宝亀8(777)1月25日
主税頭

つまり、

主計頭 → 主税頭

である。主計寮と主税寮は、制度上別の官司ですが、少なくともこの人物については両者を経験するキャリアが確認できる。「主計」と「主税」は制度上分離されているが、人間はその境界を越えて移動した。現在でも財務省内の人事は同様である。

④ 安都宿禰真足

宝亀3(772)4月20日
大学助

延暦元(782)6月20日
大学助

延暦2(783)11月12日
主計頭

つまり、

大学寮 → 大学寮 → 主計寮

であるが、大学助を二度就任している。ここでは単なる「転任」ではなく、

同じ官司での再任 → 別の専門官司へ

というキャリア構造である。

⑤ 石川朝臣公足

延暦3(784)10月26日
主計頭

↓ 約1年

延暦4(785)10月12日
主税頭

すなわち、

主計頭 → 主税頭

である。宍人継麻呂と合わせると、

主計頭 → 主税頭

二人の人物について反復しています。「制度化された人事ルート」と呼ぶには早い。

しかし、

主計頭 → 主税頭

という人事移動が一人ではなく複数人物について現れる。私はここに「人事異動ルート」というラベルを付けてよいと思っている。

⑥ 紀朝臣広名

天平18(746)4月11日
大学頭

↓ 3年余り

天平勝宝元(749)8月10日
主税頭

つまり、

大学寮 → 主税寮

である。先ほどの「大学寮 → 主計寮」の安都真足とは別に、

大学頭 → 主税頭

も確認できる。

大学寮

から、

主計寮
主税寮

という財政系寮へ移る人物が存在する。この人事情報を「官司の職掌」だけでは説明しにくい人事ネットワークである。

⑦ 藤原朝臣刷雄

延暦7(788)6月8日
大学頭

↓ 3年

延暦10(791)7月4日
陰陽頭

つまり、

大学寮 → 陰陽寮

である。「大学で学問を担当したから陰陽へ」という説明は、可能であろうか。しかし、

大学頭 → 陰陽頭

という人物移動が実在することは確認できる。大学寮と陰陽寮の間にも人事上の接続点がある。

⑧ 賀茂朝臣大川

これは職人・技術系の接続である。

神護景雲元(767)7月10日
内匠助

↓ 4年

宝亀2(771)9月16日
木工助

つまり、

内匠寮 → 木工寮

である。通説通りに、複数官司を経験する人事であるものの、この場合は技術職のトップの人事である。


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この人事異動例を見るだけでも

① 同系統内の移動

主計 → 主税
兵衛 → 近衛 → 衛門

② 隣接専門領域への移動

内匠 → 木工

③ 異なる専門領域への移動

大学 → 主計
大学 → 主税
大学 → 陰陽
兵衛 → 内匠

という三種類の人事移動ルートが確認できた。

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見えてくる現象       仮説上の意味
主計頭→主税頭が複数人   財政系官人の移動単位
兵衛府→近衛府→衛門府   衛府官人の移動単位
大学頭→陰陽頭       学識系官人の移動単位
内匠助→木工助       技術系官人の移動単位
同じ官職への再任「     人物」だけでなく「ポスト」の管理
同日複数官職一枚の人事情報だけでは処理できない
である。
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2026年9月20日日曜日

高島正憲「 奈良時代における収入格差について」『経済研究 』Vol. 71, No. 1, Jan. 2020 「特集:実証経済学の展開 」を読む

 高島正憲「 奈良時代における収入格差について」『経済研究 』Vol. 71, No. 1, Jan. 2020 「特集:実証経済学の展開 」

本論文は計量史学(Quantitative Economic History /Cliometrics)の観点から考察を加えた論文であるだけに、これまで全く接したことのない分析視点からアプローチに驚きさえ覚え、さらにはその実り多い研究成果に感銘を深くした。計量史学という分析視点が有益な戦術兵器となることに、その可能性を感じた

Evaluating "What If" Scenarios: Cliometrics often uses counterfactual models (e.g., "What would the U.S. economy have looked like without the development of railroads?") to estimate the precise value or impact of specific technological and institutional changes.

1. この論文における主要な「発見」(評価できる貢献)

本論文の最大の貢献は、従来は別々に分析されることが多かった「農民の制度的収支」と「官人の身分的給与」を、統一的な計量尺度(米の「石」換算)に換算し、制度論的・数量的に比較・統合した点にあるだろう。

① 農民の現実的な税負担構造の可視化(土地税よりも「人頭税・出挙」の重さ)

  • 構造の解明: 従来「公租公課(田租)」は収穫の3%程度と低く抑えられていたと解釈されがちでしたが、本論文は調・庸・雑徭といった「人頭税(人にかかる課役)」や、利息付き強制貸付である「出挙(すいこ)」を包括的に試算したことに、斬新さがある

  • 具体的数値: 農民(1戸約20人想定)は制度上の収入の3割〜4割弱(全国平均36.3%)を徴収されており、その内訳のうち土地税(田租など)は2〜3割に過ぎず、人頭税(調庸・雑徭)や出挙の利息が全体の7割以上を占めていたこと気づき、それを数値で明確化した点は大きな功績である

② 官人内部における極端な構造的格差の提示

  • 絶対的格差: 正一位(約6.1万石)や正三位(約1.8万石)といった上級貴族(第1集団)の収入は圧倒的であり、農民一戸の年収(約45〜76石)や一般官人の収入(数石〜数拾石)とは数千倍〜数万倍の桁違いの差が存在していたことを明示した

  • 中央(京官)と地方(外官)の逆転現象: 正五位以下の「一般官人(第3集団)」においては、平城京に勤める京官よりも、大宰府や国司といった地方(外官)勤務の官人のほうが支給額(給与)が高く設定されていたという制度的特徴を数値で確認・整理した。これまでこのような数値による中央官人-地方官人の対比を知らないだけに、その発想の新鮮さに驚いた。

③ 「前近代の経済成長と格差」という歴史経済学的問いへの接続

  • クズネッツの仮説(近代化に伴う格差拡大と収縮)の前段階として、1000年以上前の古代律令国家が「最初から制度的に極めて巨大な身分格差を内包して成立・機能していた」という歴史的エビデンスを提示した点に大きな意義があり、この論文が学界に裨益を与える最大の貢献である

2. 本論文の「欠陥」・「限界」(構造上の課題)

ところで、経済学(数量史学)的アプローチとして極めて優秀である一方で、歴史実証的・制度の実体論としては、以下のような明確な「欠陥(限界)」や問題点を提出して、高島氏のご教示を仰ぎたい。

① 「制度上の収入」と「実収(現実)」の解離(実体経済の無視)

  • 最大の問題点: 著者自身も「制度上の収入による推計」と明記しているように、律令制の最大の特徴は「制度と実態の急速な剥離」にある。

  • 具体例:

    • 農民の逃亡・浮浪: 周知のとおり8世紀後半には口分田の班給自体が形骸化し、農民の逃亡や偽籍(男性を女性と偽って報告し調庸を逃れる)が横行した。1戸20.6人という戸籍データ自体が「現実の家族構成」ではなく税逃れの虚構であった可能性が極めて高い点は、高島氏も十分に知り尽くしたうえでの議論を展開している、たとえそうだとしても、その実態とのずれは高島氏の研究視野には、どのようには寧されるのだろうか。

    • 官人の未給・未納: 律令国家の財政難により、五位以下の官人に規定通りの「季禄」や「禄物」が満額支給されることは稀であった。したがって、この推計値は「法律通りの理想的モデル」の計算に留まり、「古代人が実際に手にしていた実質所得」とは大きく乖離している点は、いかに説明なさるだろうか

② 出挙(すいこ)の性質に関する解釈の単純化

  • 出挙の利息(5割または3割)を単なる「税・負担」として計算に入れているが、実際には出挙は公的な金融・救済制度の側面と、地方官人が不正な収奪(利息の二重徴収など)を行う私的搾取の側面が混在していたこれを「制度上の定額負担」として一律に農民のマイナス計上(33〜40%を占める最大要因)と評価することには、歴史実態としての慎重さを欠きはしないだろうか。

③ 官人側の「非公式収入(加徴・不正・自墾地)」の不計上

  • 官人(特に国司などの外官)の実際の収入源は、法令上の給与(位田・職田・季禄等)だけではない。彼らは現地での「不当な徴収」「自墾地(私有地)の拡大」「交易による富の蓄積」など、法令外の巨大な実質収入を得ていた(だからこそ「外官」の利権が大きかった)。法令上の数値だけを比較すると、官人層の実質的な富や購買力を著しく「過小評価」することになるが、高島氏のご意見を伺いたい。

④ジニ係数等の計量分析の断念と分析の「記述的」限界

  • 古代地中海世界などの先行研究(Fochesato & Bowles 2017)では遺跡データ等から資産格差のジニ係数(0.7〜0.9)を出していることを序言で挙げながら、本論文は史料的制約からジニ係数等の標準的な不平等度指標の算出を断念し、階層ごとの数値を比較・記述するにとどまっている。経済学論文としては、統計的推論やインパクト評価の観点で「推計して並べた」という段階を出ていない点が惜しまれる。

まとめ

高島氏のこの論文は、「律令国家というシステムが、制度設計の段階でどれほど巨大な不平等(農民からの重課税と上級貴族への極端な富の集中)を前提として設計されていたか」を、数量的にクッキリと浮き彫りにした点で非常に高い学術的発見がある。この見解は定説化するだろう。しかし、歴史学的な実体解釈としては、「法律(制度)の数値」をそのまま「古代人の実際の生活・収入」と見なすことはできず、「理想上のモデルのシミュレーション」という限界を抱えている点が、最大の「欠陥・課題」と考える。

宮内省に関する人事情報

 

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宮内省の暫定集計

官職ユニーク人物
宮内卿14
宮内大輔13
宮内少輔12
合計39名

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宮内省の場合、実際の行政機能は、

宮内省

だけではない、本文を見ると、その周辺に、

  • 内蔵頭
  • 内蔵助
  • 大膳大夫・亮
  • 大炊頭
  • 主殿頭
  • 木工頭
  • 造宮関係
  • 園池
  • 内掃部
  • 内膳
  • 主油
  • 鍛冶
  • 正親
  • 典薬
  • 諸陵
  • 縫殿
  • 内匠

などが並んでいる。宮内省は、

「宮中で何かをする官司」

という単一な官衙ではない。

皇室・宮廷で必要となる人・物・施設・食・衣・医療・儀礼・造営を、それぞれの専門官司に分解して処理する巨大な情報・実務ネットワーク

として見ることを教える。


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宮内省――人事情報データ

1.宮内卿

本文上の「為宮内卿」は16件あるが、藤原雄依・大中臣子老がそれぞれ複数回登場するため、人物としては14名である。

No.人物任官記事備考
1犬上王和銅元・3・13宮内卿
2長屋王和銅2・11・2後に式部卿
3多治比真人大県守和銅3・4・23
4阿倍朝臣広庭霊亀元・5・22
5石川王天平9・11・19
6百済王敬福天平勝宝2・5・14
7藤原朝臣魚名天平宝字8・9・25
8石川朝臣豊成宝亀期
9藤原朝臣継縄宝亀3・11・1後に大納言等
10大伴宿禰伯麻呂宝亀期
11藤原朝臣雄依宝亀11・2・9後に大蔵卿
12大中臣朝臣子老延暦4・5・20その後も再任
13石川朝臣垣守延暦期武蔵守如故
14石上朝臣家成延暦期

延暦4年には、藤原雄依が大蔵卿、大中臣子老が宮内卿という配置になっています

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2.宮内大輔

「為宮内大輔」は15件、ただし石川朝臣麻呂が天平18年に2回出るため、人物としては13名である。


No.人物任官記事備考
1百済王慈敬天平13・8・9
2石川朝臣麻呂天平18・3・10
3茨田王天平18・9・19
4県犬養宿禰古麻呂神護景雲元・12・9
5榎井朝臣子祖神護景雲2・2・18
6田中朝臣多太麻呂宝亀期
7阿倍朝臣東人宝亀期
8掃守王宝亀3・11・9
9中臣朝臣常宝亀期
10石上朝臣家成宝亀期
11文室真人高嶋宝亀10・11・28
12紀朝臣犬養宝亀11期
13中臣朝臣常延暦8・5・29再任
14紀朝臣難波麻呂延暦期
15橘朝臣綿裳延暦期

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3.宮内少輔

直接「為宮内少輔」と記されるものは12件・12名である

No.人物任官記事
1高橋朝臣安麻呂養老期
2多治比真人占部養老5・10・17
3波多朝臣足人天平18・9・20
4巨勢朝臣浄成天平宝字元・6・16
5紀朝臣犬養宝亀期
6佐味朝臣継人宝亀7・3・6
7宍人朝臣継麻呂宝亀9・7・23
8甘南備真人浄野延暦元・2・7
9三嶋真人大湯坐延暦3・?
10安倍朝臣真黒麻呂延暦3・4・30
11藤原朝臣乙友延暦?
12多治比真人賀智延暦10・7・28


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典薬寮は宮内省に所属し、5位以上の官人の医療を担当し、同時に石などを養成する機関である。


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民部省、大蔵省、そして宮内省の3省間の人事交流

 民部省、大蔵省、そして宮内省の3省と人事交流

①民部省

地方行政・戸籍・租税・国司情報

国から中央へ上がる情報

勘会・確認・評価

人事


②大蔵省

財物・出納・銭・稲・物資

数量・収納・支出・管理情報

中央財政処理

行政判断


③宮内省

宮廷内部の物・人・施設・食・衣・医療・儀礼

日々発生する実務情報

各専門官司による処理

宮廷運営



宮内省の人事表を見てみると、

大蔵大輔 → 宮内大輔
宮内大輔 → 他官司
宮内卿 → 大蔵卿
宮内卿 → 中務・大納言系

という人事移動ラインが見えてくる。、

「どの官司を経験したか」が、次の任官を考える上で意味を持っていた

という可能である。

官職 → 情報 → 判断 → 次の官職

というモデルを提出してもよさそうである。


さて、これまでの民部省から宮内省までの人事情報を取りまとめてみると、

太政官
→ 民部省
→ 式部省
→ 兵部省
→ 中務省
→ 治部省
→ 刑部省
→ 大蔵省
→ 宮内省

次の段階では人数を数えること以上に、「同じ人物がどの官司からどの官司へ移ったか」を横断的に見る分析視点を持つべきだと思う。たとえば、

民部 → 大蔵 → 宮内

なのか、

式部 → 中務 → 宮内

なのか、

刑部 → 治部 → 宮内

なのか。

これを人物単位で線にすると、

「律令官僚は、官司を移動しながら、どのような行政情報を経験・蓄積していたのか」

とする作業仮説に至る。やはり、人事ルートを想定してもよさそうである。

大蔵省に関する人事情報

 

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大蔵省――人事情報データ

1.大蔵卿 15名

No.年月日人物位階任官備考
1和銅元・3・13広瀬王従四位上大蔵卿初期の大蔵卿
2天平18・3・16三原王従四位上大蔵卿
3天平勝宝6・4・5紀朝臣飯麻呂従四位上大蔵卿同時に中央官人多数の異動
4天平勝宝6・9・4文室真人大市従四位上大蔵卿
5天平宝字元・6・16塩焼王正四位上大蔵卿池田王=刑部卿と同時
6天平宝字8・10・20石川朝臣豊成正四位下大蔵卿右大弁如故
7神護景雲元・2・28阿倍朝臣毛人従四位下大蔵卿
8宝亀3・2・16藤原朝臣継縄従三位大蔵卿後に宮内卿
9宝亀3・11・1?藤原朝臣浜成従四位上大蔵卿
10宝亀?石上朝臣息継従四位下大蔵卿
11宝亀?神王従四位下大蔵卿
12延暦4・5・20藤原朝臣雄依従四位上大蔵卿
13延暦4・10・12大伴宿禰潔足従四位下大蔵卿
14延暦7・3・21石川朝臣豊人従四位上大蔵卿中宮大夫・武蔵守如故
15延暦10・7・4佐伯宿禰真守従五位上?大蔵卿右大弁如故

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2.大蔵大輔 12名

直接「為大蔵大輔」と確認できるのは、次の12名です。

No.年月日人物任官
1小田王大蔵大輔
2天平19・3・10額田部王大蔵大輔
3天平19?巨勢朝臣清成大蔵大輔
4宝亀元・12・28掃守王大蔵大輔
5宝亀3・11・9安倍朝臣東人大蔵大輔
6宝亀7・3・6菅生王大蔵大輔
7宝亀?大伴宿禰不破麻呂大蔵大輔
8延暦元・2・7粟田朝臣鷹守大蔵大輔
9延暦元・9・9多治比真人年主大蔵大輔
10延暦4・1・27紀朝臣作良大蔵大輔
11延暦4・7・6内蔵宿禰全成大蔵大輔
12延暦5・2・17文室真人水通大蔵大輔
13延暦9・7・24藤原朝臣真作大蔵大輔

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3.大蔵少輔 15名

ここはかなり面白いです。

直接「為大蔵少輔」となる人物は、

No.年月日人物任官
1養老4・10・9阿倍朝臣若足大蔵少輔
2養老5・6・26布勢朝臣広道大蔵少輔
3天平3・6・13許曾倍朝臣足人大蔵少輔
4天平4・10・17当麻真人広人大蔵少輔
5天平9・12・23石川朝臣牛養大蔵少輔
6天平18・9・20紀朝臣可比佐大蔵少輔
7神護景雲2・7・?石河朝臣人麻呂大蔵少輔
8宝亀元・6・3弓削御浄朝臣秋麻呂大蔵少輔
9宝亀?吉備朝臣真事大蔵少輔
10宝亀9・2・23紀朝臣真子大蔵少輔
11宝亀11・3・17豊国真人船城大蔵少輔
12延暦2・6・21賀茂朝臣大川大蔵少輔
13延暦5・6・9多治比真人公子大蔵少輔
14延暦?和朝臣国守大蔵少輔
15延暦10・3・21巨勢朝臣広山大蔵少輔

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大蔵省の中に「財物を管理するための情報処理ポスト」がかなり明瞭に組み込まれている。

大蔵省の下には、

大蔵卿

大蔵大輔

大蔵少輔

主計頭・主計助

主税頭・主税助

鋳銭関係官司

内蔵関係官司


が存在します。

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刑部省に関する人事情報

 刑部省――まず全体像

『続日本紀』を追うと、刑部省には少なくとも、

  • 犯罪・訴訟
  • 刑罰
  • 大判事との連携
  • 司法判断
  • 官人の処分
  • 重大事件の審理
  • 地方官の責任問題

という情報が集まっている。


『続日本紀』から確認できる範囲では、延暦10年までに、

官職確認できる人物数
刑部卿13名
刑部大輔8名
刑部少輔13名以上
合計34名以上

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1.刑部卿

まず直接確認できる人物を年代順に並べます。

年月日人物任官・在職
和銅元・3・13竹田王刑部卿
天平13・8・9長田王刑部卿
天平15・6・30大市王刑部卿
天平18・4・11多治比真人広足刑部卿
天平19・11・4多治比真人占部刑部卿
天平宝字元・6・16池田王刑部卿
天平宝字年間百済王敬福刑部卿
宝亀年間藤原朝臣浜足刑部卿
宝亀年間藤原朝臣浜成刑部卿
宝亀11・11・28以前文室真人邑珍刑部卿
宝亀11・3・17石川朝臣垣守刑部卿
延暦2・6・21多治比真人長野刑部卿
延暦3・4・2淡海真人三船刑部卿
延暦4・7・29安倍朝臣東人刑部卿

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2.刑部大輔

こちらはかなり明瞭です。

年月日人物任官
養老5・6・26当麻真人大名刑部大輔
天平10・閏7・7宇治王刑部大輔
天平18・4・1頃甘南備真人神前刑部大輔
神護景雲3・3・10船井王刑部大輔
宝亀7・3・6淡海真人三船刑部大輔
延暦元・2・7安倍朝臣東人刑部大輔
延暦8・3・16藤原朝臣黒麻呂刑部大輔
延暦8・9・12上毛野朝臣稲人刑部大輔

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3.刑部少輔

ここが今回の核心です。

明記される刑部少輔

年月日人物
和銅~養老期鍛治造大隅
養老5・3・25高橋朝臣広嶋
天平18・9・20巨勢斐太朝臣嶋村
天平宝字元・7・12小野朝臣田守
神護景雲元・12・9石川朝臣豊人
神護景雲2・?紀朝臣難波麻呂
宝亀7・3・6紀朝臣難波麻呂
宝亀8・8・20阿倍朝臣石行
宝亀10頃県犬養宿禰伯
延暦10・?紀朝臣楫継

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特記)延暦4年の淡海真人三船薨伝には、刑部卿になるまでの履歴がかなり詳しく書かれている。

式部少丞 → 式部少輔 → 中務大輔 → 東山道巡察使 → 大宰少弐 → 刑部大輔 → 大判事・大学頭兼文章博士 → 刑部卿

だと。これこそ、身分上昇ルートの典型である。

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民部省では、

地方行政情報 → 税・戸籍・財政情報 → 中央で照合 → 官人評価

という人事ラインが見えた。刑部省では、少し違う。

事件・訴訟・犯罪情報

刑部省・大判事

事実確認・審理

責任者の特定

処罰・赦免・復位などの行政判断

という*責任情報の処理システム」が見えてきます。三船の履歴を見ると、

採訪する人間 → 報告する人間 → 審理する人間 → 判定する人間

とある。 

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治部省に関する人事情報

 

治部省――まず全体像

延暦10年までに確認できる人員は、

官職人数備考
治部卿15名兼任を含む
治部大輔13名同一人物の再任は1名として集計
治部少輔19名明記例+文脈上明らかな例を含む
47名重複人物は各官職内で整理

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1.治部卿

年月日人物任官備考
和銅元・3・13弥努王治部卿初期の治部卿
和銅元・9・4安八万王治部卿弥努王から交替
養老5・6・26坂合部王治部卿
天平3・12・21の記事門部王治部卿神馬・祥瑞奏上に登場
天平11・3・21の記事茅野王治部卿対馬の神馬奏上
天平12・9・11三原王治部卿伊勢大神宮奉幣
天平18・3・7の記事石上朝臣乙麻呂治部卿白亀奏上
天平18・4・11安宿王治部卿
天平19・3・10藤原朝臣八束治部卿
天平宝字元・6・16文屋真人智努治部卿
神護景雲元・11・17山村王治部卿薨去時の官職
神護景雲2・7・1多治比真人土作治部卿左京大夫・讃岐守如故
宝亀2・12・6文室真人大市兼治部卿大納言兼任
宝亀5・3・5藤原朝臣家依治部卿
延暦元・2・14壱志濃王治部卿讃岐守如故

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和銅元年の

従四位下弥努王為治部卿

と、同年9月の

従四位下安八万王為治部卿

また、宝亀2年12月には、

大納言従二位文室真人大市為兼治部卿

とあり、治部卿が兼官している。

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2.治部大輔


年月日人物任官備考
天平9・12・23神前王治部大輔
天平13・7・3紀朝臣浄人治部大輔兼文章博士
天平16・2・2頃紀朝臣清人治部大輔平城宮留守
天平19・9・23佐味朝臣虫麻呂治部大輔
宝亀元・10・23豊国真人秋篠治部大輔甲斐守如故
宝亀3・4・20大伴宿禰潔足治部大輔
宝亀11・4・20藤原朝臣黒麻呂治部大輔
延暦元・8・9藤原朝臣黒麻呂治部大輔再任・確認
延暦元・9・9大中臣朝臣継麻呂治部大輔
延暦3・4・2藤原朝臣菅継治部大輔
延暦4・1・15中臣朝臣常治部大輔
延暦6・3・22紀朝臣作良治部大輔
延暦7・3・21粟田朝臣鷹守治部大輔
延暦8・3・19中臣朝臣常治部大輔再任
延暦8・9・12藤原朝臣黒麻呂治部大輔再任
延暦9・7・24藤原朝臣是人治部大輔

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例えば藤原黒麻呂は複数回、

  • 宝亀11年4月
  • 延暦元年8月
  • 延暦8年9月

と治部大輔に任じられていることは特徴的である。

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3.治部少輔

A.「治部少輔」と明記される人物

人物年月日証拠
阿倍朝臣吾人天平10・閏7・7A
県犬養宿禰古麻呂天平18・9・20A
高向朝臣家主神護景雲2頃A
多治比真人豊浜宝亀2・11・19A
安倍朝臣常嶋宝亀8・1・27A
安倍朝臣謂奈麻呂宝亀8・10・13A
高倉朝臣殿嗣宝亀11・3・17A
三嶋真人大湯坐天応元・5・25A
安倍朝臣草麻呂延暦2・11・12A
高倉朝臣石麻呂延暦4・3・11A
百済王元信延暦9・3・26A
菅野朝臣真道延暦10・1・28A


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①大原真人今城

天平宝字元年6月16日の人事記事では、

文屋真人智努為治部卿、従五位下大原真人今城為少輔

と連続するので、これは治部卿―治部少輔という一組の人事と読むのが自然であろう。

②石川朝臣名継

宝亀5年3月5日の記事では、

藤原朝臣家依為治部卿、従五位上石川朝臣名継為少輔

とある。これも治部省の人事として扱うべきだろう。

③小野朝臣東人

天平19年9月23日、

佐味朝臣虫麻呂為治部大輔、従五位下小野朝臣東人為少輔

とある。これも治部大輔+治部少輔のセット人事と見る根拠が強い。

④文室真人真屋麻呂

延暦6年3月22日、

紀朝臣作良為治部大輔、従五位下文室真人真屋麻呂為少輔

とある。これも同じ構造だろう。

⑤文室真人大原

延暦9年7月24日、

藤原朝臣是人為為治部大輔、従五位下文室真人大原為少輔

とある。

この5れうからの推測であるが、一つのフォームがあったに違いない。

「~~為治部大輔、従五位下~~為少輔」

⑥任官記事はないが、大宅朝臣金弓が治部少輔として葬儀監護となっているので、数えて良い

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ところで、治部省の業務として、

① 祥瑞の「情報処理」

天平3年には治部卿門部王らが甲斐国からの神馬について奏上しています。

また天平11年には治部卿茅野王らが、対馬で得られた神馬について奏上しています。

さらに天平18年には治部卿石上乙麻呂らが、河内国から出た白亀について奏上しています。

つまり治部省は、

地方 → 国司 → 治部卿 → 天皇

という情報経路の途中にある、この点は、

地方行政文書 → 中央官司 → 情報の加工・照合 → 判断 → 行政行為

というモデルにか合致する例であろう。

② 外交・儀礼だけではない

治部省について一般的には、氏姓・外交・儀礼・僧尼・雅楽・陵墓などが職掌として挙げられている

しかし『続日本紀』の人事を追うと、少なくとも奈良時代には、

「中央政府が地方・外国・寺社・氏族などから受け取った、意味づけを必要とする情報を処理する官司」

という側面がかなり見えてくる。白亀や神馬を単に受け取るのではなく、

それは何を意味するのか
瑞図と合致するのか
天皇の徳との関係はどうか
それをどう天皇に奏上するか

という情報の意味づけ作業が発生しているからである。


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