2024年2月3日土曜日

大宰府から進上された品々などーー木簡から見る

まずは、次の木簡を見て頂こう。


(1)「筑後国生葉郡煮塩年魚肆斗貳升/霊亀三年∥」

>> 煮塩年魚(アユ)の貢進札。『延喜内膳式』によると、大宰府から年料の贄として煮塩年魚を貢進している。この木簡が郡単位の貢進であることともあわせ考えれば、贄貢進札であろうか。また霊亀三年という記載法も同年の年料分という意であろう。

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URLhttps://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AACVS15000080
木簡番号2287
本文筑後国生葉郡煮塩年魚肆斗貳升/霊亀三年∥
寸法(mm)172
21
厚さ4
型式番号031
出典◎木研3-65頁-(22)(平城宮2-2287・城3-6上(77))
文字説明 
形状 
樹種広葉樹
木取り 
遺跡名平城宮造酒司地区
所在地奈良県奈良市佐紀町
調査主体奈良国立文化財研究所
発掘次数22N
遺構番号SD3035
地区名6AACVS15
内容分類荷札
国郡郷里筑後国生葉郡
人名 
和暦霊亀3年
西暦717(年)
木簡説明煮塩年魚(アユ)の貢進札。『延喜内膳式』によると、大宰府から年料の贄として煮塩年魚を貢進している。この木簡が郡単位の貢進であることともあわせ考えれば、贄貢進札であろうか。また霊亀三年という記載法も同年の年料分という意であろう。


なお、鮎に関しては、次の木簡にも注目したい。

詳細

URLhttps://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AAFOH35000001
木簡番号2804
本文・□○煮塩鮎十□〔隻ヵ〕・□□《》〈〉
寸法(mm)(102)
19
厚さ3
型式番号081
出典平城宮2-2804(城3-11下(204))
文字説明 
形状上欠、下欠。
樹種 
木取り 
遺跡名平城宮東院地区西辺
所在地奈良県奈良市佐紀町
調査主体奈良国立文化財研究所
発掘次数22S
遺構番号SD3245
地区名6AAFOH35
内容分類文書
国郡郷里 
人名 
和暦 
西暦 
木簡説明二八〇三の鮨鮎の木簡と同筆か。煮塩鮎は、鮎の煮物をいう。調雑物(賦役令)、交易雑物(延喜民部式下)、中男作物(同主計式上)、年料贄(同内膳式)として近江・丹波・備中・土佐・大宰府等から貢進された。木簡には筑後国生葉郡から貢上された例がある(二二八七・二二八八)。『延喜式』では、竈神祭料・新嘗祭供御料・中宮豊楽料・正月節供御料等に用いられている。

■研究文献情報


(2)「津備七升」

>>『和名抄』によると、螭螺に太都比(タツビ)、海蠃に豆比(ツビ)の和名がみえ、巻き貝の一種でツブ(螺)貝のことであろう。大宰府跡出土木簡にも「都備」がみえる(『大宰府史跡出土木簡概報』七号)。

詳細

URLhttps://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AJBQO29000104
木簡番号1253
本文津備七升
寸法(mm)112
27
厚さ5
型式番号032
出典藤原宮3-1253(飛6-17下(187)・日本古代木簡選)
文字説明 
形状上削り、下削り、左削り、右削り。
樹種ヒノキ属△
木取り板目
遺跡名藤原宮跡東方官衙北地区
所在地奈良県橿原市高殿町
調査主体奈良国立文化財研究所飛鳥藤原宮跡発掘調査部
発掘次数藤原宮第29次
遺構番号SD170
地区名6AJBQO29
内容分類付札
国郡郷里 
人名 
和暦 
西暦 
木簡説明四周削り。『和名抄』によると、螭螺に太都比(タツビ)、海蠃に豆比(ツビ)の和名がみえ、巻き貝の一種でツブ(螺)貝のことであろう。大宰府跡出土木簡にも「都備」がみえる(『大宰府史跡出土木簡概報』七号)。


(3)「筑紫大宰進上肥後国託麻郡…□子紫草」

文意は明確ではないが、大宰府からの進上品に肥後国詫麻郡からの貢納品紫草があったと理解してよいだろう。


詳細

URLhttps://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AFIUOZ0000204
木簡番号0
本文筑紫大宰進上肥後国託麻郡…□子紫草
寸法(mm)(68+19)
19
厚さ3
型式番号081
出典城31-31下(464)
文字説明 
形状四片接続(一片分離)、中欠、上欠、下欠。
樹種 
木取り 
遺跡名平城京左京三条二坊八坪二条大路濠状遺構(南)
所在地奈良県奈良市二条大路南一丁目
調査主体奈良国立文化財研究所平城宮跡発掘調査部
発掘次数193B
遺構番号SD5100
地区名6AFIUOZ
内容分類文書
国郡郷里筑前国大宰府・肥後国託麻郡
人名 
和暦 
西暦 
木簡説明 

■研究文献情報


(4)「基肄郡布七端絁六匹□□〔布ヵ〕一匹□〔駄ヵ〕一□〔匹ヵ〕

h⇒肥前国基肄郡産の布七端(長さ1端は5丈2尺、幅は2尺4寸)、絁六匹(長さ1疋は5丈1尺、幅は2尺2寸)。約100メートル近い長さの布や絁である。

この木簡に関しては、遠藤茜氏の説明に詳しい。写真付き。

p34 (dazaifu.lg.jp)


詳細

URLhttps://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/MK035129000001
木簡番号0
本文基肄郡布七端絁六匹□□〔布ヵ〕一匹□〔駄ヵ〕一□〔匹ヵ〕
寸法(mm)1013
524
厚さ15
型式番号061
出典木研35-129頁-(1)
文字説明墨書は箱の外側面下方に、右手に横倒しで縦書きされる。十字目は「貲」か。
形状 
樹種 
木取り 
遺跡名大宰府条坊跡右郭十八条七・八坊
所在地福岡県太宰府市都府楼南三丁目
調査主体太宰府市教育委員会
発掘次数289
遺構番号条289SE025
地区名
内容分類
国郡郷里肥前国基肄郡
人名 
和暦 
西暦 
木簡説明 

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5)「大宰府貢交易油三斗□□〔五升ヵ〕・○寶亀三年料」

⇒油

⇒深沢氏らの説明によると、

食用に胡 麻油が使われていることを除いて、甲の修理に胡麻油(表 13:5)、鞍作りに曼椒油(表13:2)、靴や糸鞋作りに胡 麻油と麻子油(表13:3)、馬の薬として曼椒油と胡麻油 (表13:1)、漆器製作に荏油(表13:10)、染工も荏油が 使われていたことがわかる。  灯明用と確認できる油は、ほとんどが胡麻油である。 正倉院文書には仏堂や僧房・曹司の灯りに胡麻油を用い る例が散見され、延喜式によれば釈奠の灯明には胡麻油 (表13:7)が用いられた。胡麻油の他、鎮魂祭(表13:8) と追儺(表13:9)には、曼椒油が使われた」【62頁)

とあり、7種の油の一つだと想定される。ただし、「交易油」とある「交易」の意味が分からないが、輸入品か?。

参考文献

深澤芳樹ほか「7、8世紀の灯明油に関する覚え書き」『奈文研紀要 2013』。

 桑田 訓也「(奈良文化財研究所)「文字資料からみた日本古代の松明(覚書) 

kaken_15K03001_065_068.pdf (nabunken.go.jp) 2023年11月1日アクセス

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(6)「□□〔筑紫〕大宰進上筑前国嘉麻郡殖□〔種〕→」

⇒肥前国嘉麻郡からの進上品を書いた木簡の断片か。

詳細

URLhttps://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AFIUO48000149
木簡番号0
本文□□〔筑紫〕大宰進上筑前国嘉麻郡殖□〔種〕→
寸法(mm)(84)
16
厚さ2
型式番号081
出典城22-40上(439)
文字説明 
形状 
樹種 
木取り 
遺跡名平城京左京三条二坊八坪二条大路濠状遺構(南)
所在地奈良県奈良市二条大路南一丁目
調査主体奈良国立文化財研究所平城宮跡発掘調査部
発掘次数197
遺構番号SD5100
地区名6AFIUO48
内容分類荷札
国郡郷里筑前国大宰府〉・筑前国嘉麻郡
人名 
和暦 
西暦 
木簡説明 

■研究文献情報


(7)「筑紫大宰進上筑前国穂波」

⇒筑前国穂波郡からの進上品を書いた木簡の断片か。


詳細

URLhttps://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AFIUO48000152
木簡番号0
本文筑紫大宰進上筑前国穂波→
寸法(mm)(74)
17
厚さ2
型式番号039
出典城22-40上(438)
文字説明 
形状 
樹種 
木取り 
遺跡名平城京左京三条二坊八坪二条大路濠状遺構(南)
所在地奈良県奈良市二条大路南一丁目
調査主体奈良国立文化財研究所平城宮跡発掘調査部
発掘次数197
遺構番号SD5100
地区名6AFIUO48
内容分類荷札
国郡郷里筑前国大宰府〉・筑前国穂浪郡
人名 
和暦 
西暦 
木簡説明 

■研究文献情報


(8)「糟屋郡紫草廿根」

⇒筑前国糟屋郡産の紫草

白色のかれんな花を咲かせる、ムラサキ目ムラサキ科ムラサキ属の多年生植物。紫草の根

⇒用途としては、シコニンという赤色の色素は、ツバキの灰(アルミニウムイオン)とまぜると、天然の紫色染料の原料となる。

⇒本木簡では不明であるが、これも貢納品であった可能性もある。

⇒なお、「(肥後国)合志郡紫草大根四百五十編」(https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/MK008099000226)とあり、肥後国からの進上品もあった。

■詳細

URLhttps://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/MK008099000213
木簡番号193
本文糟屋郡紫草廿根
寸法(mm)128
22
厚さ5
型式番号032
出典木研8-99頁-2(13)(大宰府木簡概報2-193)
文字説明 
形状 
樹種 
木取り 
遺跡名大宰府跡不丁官衙地区
所在地福岡県太宰府市大字観世音寺字不丁
調査主体九州歴史資料館
発掘次数87
遺構番号SD2340
地区名
内容分類付札
国郡郷里筑前国糟屋郡
人名 
和暦 
西暦 
木簡説明 
筑前

■研究文献情報

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詳細

URLhttps://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/MK006096000010
木簡番号157
本文肥前国松浦郡神戸調薄鰒→
寸法(mm)(187)
(18)
厚さ3
型式番号081
出典大宰府木簡概報2-157(日本古代木簡選・木研6-96頁-(10)・大宰府58概報-(14))
文字説明 
形状下欠(折れ)、左二次的切断、右二次的切断。
樹種 
木取り板目
遺跡名大宰府跡不丁官衙地区(右郭六条一坊・二坊)
所在地福岡県太宰府市大字観世音寺字不丁
調査主体九州歴史資料館
発掘次数85
遺構番号SD2340
地区名
内容分類文書?
国郡郷里肥前国松浦郡
人名 
和暦 
西暦 
木簡説明 

■研究文献情報


(8)「肥前国松浦郡神戸調薄鰒」

*『延喜式』主計式に見えるだけでも 20 の国・島の税物として多様なアワビの加工品が合記載されている。神饌や供御,節会等の饗宴で大量に調達された。その理由は長期保存食品であったからだろう。

十世紀に編纂された『延喜式』主計上の諸国調条に見る肥前国から献上される調では、

「御取鰒三百六十四斤、短鰒五百三十四斤、長鰒24斤、羽割鰒24斤、熬海鼠301斤14両」

とある。

「薄鰒」(ウスアワビ)の付札。「編」は鰒をまとめた単位。鮑をマワシナガラ薄く剥き、貯蔵用に干した物

⇒「御取鮑」は「身取鮑」とも表記。鰒を薄く裂いて、干し、数枚を合わせてその一端を細縄で結んだ物


詳細

URLhttps://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/MK006096000010
木簡番号157
本文肥前国松浦郡神戸調薄鰒→
寸法(mm)(187)
(18)
厚さ3
型式番号081
出典大宰府木簡概報2-157(日本古代木簡選・木研6-96頁-(10)・大宰府58概報-(14))
文字説明 
形状下欠(折れ)、左二次的切断、右二次的切断。
樹種 
木取り板目
遺跡名大宰府跡不丁官衙地区(右郭六条一坊・二坊)
所在地福岡県太宰府市大字観世音寺字不丁
調査主体九州歴史資料館
発掘次数85
遺構番号SD2340
地区名
内容分類文書?
国郡郷里肥前国松浦郡
人名 
和暦 
西暦 
木簡説明 

■研究文献情報

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