まずは、次の木簡を見て頂こう。
(1)「筑後国生葉郡煮塩年魚肆斗貳升/霊亀三年∥」
>> 煮塩年魚(アユ)の貢進札。『延喜内膳式』によると、大宰府から年料の贄として煮塩年魚を貢進している。この木簡が郡単位の貢進であることともあわせ考えれば、贄貢進札であろうか。また霊亀三年という記載法も同年の年料分という意であろう。
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URL | https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AACVS15000080 | |
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木簡番号 | 2287 | |
本文 | 筑後国生葉郡煮塩年魚肆斗貳升/霊亀三年∥ | |
寸法(mm) | 縦 | 172 |
横 | 21 | |
厚さ | 4 | |
型式番号 | 031 | |
出典 | ◎木研3-65頁-(22)(![]() | |
文字説明 | ||
形状 | ||
樹種 | 広葉樹 | |
木取り | ||
遺跡名 | 平城宮造酒司地区 | |
所在地 | 奈良県奈良市佐紀町 | |
調査主体 | 奈良国立文化財研究所 | |
発掘次数 | 22N | |
遺構番号 | SD3035 | |
地区名 | 6AACVS15 | |
内容分類 | 荷札 | |
国郡郷里 | 筑後国生葉郡 | |
人名 | ||
和暦 | 霊亀3年 | |
西暦 | 717(年) | |
木簡説明 | 煮塩年魚(アユ)の貢進札。『延喜内膳式』によると、大宰府から年料の贄として煮塩年魚を貢進している。この木簡が郡単位の貢進であることともあわせ考えれば、贄貢進札であろうか。また霊亀三年という記載法も同年の年料分という意であろう。 |
なお、鮎に関しては、次の木簡にも注目したい。
詳細
URL | https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AAFOH35000001 | |
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木簡番号 | 2804 | |
本文 | ・□○煮塩鮎十□〔隻ヵ〕・□□《》〈〉 | |
寸法(mm) | 縦 | (102) |
横 | 19 | |
厚さ | 3 | |
型式番号 | 081 | |
出典 | ![]() | |
文字説明 | ||
形状 | 上欠、下欠。 | |
樹種 | ||
木取り | ||
遺跡名 | 平城宮東院地区西辺 | |
所在地 | 奈良県奈良市佐紀町 | |
調査主体 | 奈良国立文化財研究所 | |
発掘次数 | 22S | |
遺構番号 | SD3245 | |
地区名 | 6AAFOH35 | |
内容分類 | 文書 | |
国郡郷里 | ||
人名 | ||
和暦 | ||
西暦 | ||
木簡説明 | 二八〇三の鮨鮎の木簡と同筆か。煮塩鮎は、鮎の煮物をいう。調雑物(賦役令)、交易雑物(延喜民部式下)、中男作物(同主計式上)、年料贄(同内膳式)として近江・丹波・備中・土佐・大宰府等から貢進された。木簡には筑後国生葉郡から貢上された例がある(二二八七・二二八八)。『延喜式』では、竈神祭料・新嘗祭供御料・中宮豊楽料・正月節供御料等に用いられている。 |
■研究文献情報
(2)「津備七升」
>>『和名抄』によると、螭螺に太都比(タツビ)、海蠃に豆比(ツビ)の和名がみえ、巻き貝の一種でツブ(螺)貝のことであろう。大宰府跡出土木簡にも「都備」がみえる(『大宰府史跡出土木簡概報』七号)。
詳細
URL | https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AJBQO29000104 | |
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木簡番号 | 1253 | |
本文 | 津備七升 | |
寸法(mm) | 縦 | 112 |
横 | 27 | |
厚さ | 5 | |
型式番号 | 032 | |
出典 | 藤原宮3-1253(![]() | |
文字説明 | ||
形状 | 上削り、下削り、左削り、右削り。 | |
樹種 | ヒノキ属△ | |
木取り | 板目 | |
遺跡名 | 藤原宮跡東方官衙北地区 | |
所在地 | 奈良県橿原市高殿町 | |
調査主体 | 奈良国立文化財研究所飛鳥藤原宮跡発掘調査部 | |
発掘次数 | 藤原宮第29次 | |
遺構番号 | SD170 | |
地区名 | 6AJBQO29 | |
内容分類 | 付札 | |
国郡郷里 | ||
人名 | ||
和暦 | ||
西暦 | ||
木簡説明 | 四周削り。『和名抄』によると、螭螺に太都比(タツビ)、海蠃に豆比(ツビ)の和名がみえ、巻き貝の一種でツブ(螺)貝のことであろう。大宰府跡出土木簡にも「都備」がみえる(『大宰府史跡出土木簡概報』七号)。 |
(3)「筑紫大宰進上肥後国託麻郡…□子紫草」
文意は明確ではないが、大宰府からの進上品に肥後国詫麻郡からの貢納品紫草があったと理解してよいだろう。
詳細
URL | https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AFIUOZ0000204 | |
---|---|---|
木簡番号 | 0 | |
本文 | 筑紫大宰進上肥後国託麻郡…□子紫草 | |
寸法(mm) | 縦 | (68+19) |
横 | 19 | |
厚さ | 3 | |
型式番号 | 081 | |
出典 | ![]() | |
文字説明 | ||
形状 | 四片接続(一片分離)、中欠、上欠、下欠。 | |
樹種 | ||
木取り | ||
遺跡名 | 平城京左京三条二坊八坪二条大路濠状遺構(南) | |
所在地 | 奈良県奈良市二条大路南一丁目 | |
調査主体 | 奈良国立文化財研究所平城宮跡発掘調査部 | |
発掘次数 | 193B | |
遺構番号 | SD5100 | |
地区名 | 6AFIUOZ | |
内容分類 | 文書 | |
国郡郷里 | 筑前国〈大宰府〉・肥後国託麻郡 | |
人名 | ||
和暦 | ||
西暦 | ||
木簡説明 |
■研究文献情報
(4)「基肄郡布七端絁六匹□□〔布ヵ〕一匹□〔駄ヵ〕一□〔匹ヵ〕
h⇒肥前国基肄郡産の布七端(長さ1端は5丈2尺、幅は2尺4寸)、絁六匹(長さ1疋は5丈1尺、幅は2尺2寸)。約100メートル近い長さの布や絁である。
この木簡に関しては、遠藤茜氏の説明に詳しい。写真付き。
詳細
URL | https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/MK035129000001 | |
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木簡番号 | 0 | |
本文 | 基肄郡布七端絁六匹□□〔布ヵ〕一匹□〔駄ヵ〕一□〔匹ヵ〕 | |
寸法(mm) | 縦 | 1013 |
横 | 524 | |
厚さ | 15 | |
型式番号 | 061 | |
出典 | 木研35-129頁-(1) | |
文字説明 | 墨書は箱の外側面下方に、右手に横倒しで縦書きされる。十字目は「貲」か。 | |
形状 | ||
樹種 | ||
木取り | ||
遺跡名 | 大宰府条坊跡右郭十八条七・八坊 | |
所在地 | 福岡県太宰府市都府楼南三丁目 | |
調査主体 | 太宰府市教育委員会 | |
発掘次数 | 289 | |
遺構番号 | 条289SE025 | |
地区名 | ||
内容分類 | 箱 | |
国郡郷里 | 肥前国基肄郡 | |
人名 | ||
和暦 | ||
西暦 | ||
木簡説明 |
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(5)「大宰府貢交易油三斗□□〔五升ヵ〕・○寶亀三年料」
⇒油
⇒深沢氏らの説明によると、
「食用に胡 麻油が使われていることを除いて、甲の修理に胡麻油(表 13:5)、鞍作りに曼椒油(表13:2)、靴や糸鞋作りに胡 麻油と麻子油(表13:3)、馬の薬として曼椒油と胡麻油 (表13:1)、漆器製作に荏油(表13:10)、染工も荏油が 使われていたことがわかる。 灯明用と確認できる油は、ほとんどが胡麻油である。 正倉院文書には仏堂や僧房・曹司の灯りに胡麻油を用い る例が散見され、延喜式によれば釈奠の灯明には胡麻油 (表13:7)が用いられた。胡麻油の他、鎮魂祭(表13:8) と追儺(表13:9)には、曼椒油が使われた」【62頁)
とあり、7種の油の一つだと想定される。ただし、「交易油」とある「交易」の意味が分からないが、輸入品か?。
参考文献
深澤芳樹ほか「7、8世紀の灯明油に関する覚え書き」『奈文研紀要 2013』。
桑田 訓也「(奈良文化財研究所)「文字資料からみた日本古代の松明(覚書)
kaken_15K03001_065_068.pdf (nabunken.go.jp) 2023年11月1日アクセス
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(6)「□□〔筑紫〕大宰進上筑前国嘉麻郡殖□〔種〕→」
⇒肥前国嘉麻郡からの進上品を書いた木簡の断片か。
詳細
URL | https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AFIUO48000149 | |
---|---|---|
木簡番号 | 0 | |
本文 | □□〔筑紫〕大宰進上筑前国嘉麻郡殖□〔種〕→ | |
寸法(mm) | 縦 | (84) |
横 | 16 | |
厚さ | 2 | |
型式番号 | 081 | |
出典 | ![]() | |
文字説明 | ||
形状 | ||
樹種 | ||
木取り | ||
遺跡名 | 平城京左京三条二坊八坪二条大路濠状遺構(南) | |
所在地 | 奈良県奈良市二条大路南一丁目 | |
調査主体 | 奈良国立文化財研究所平城宮跡発掘調査部 | |
発掘次数 | 197 | |
遺構番号 | SD5100 | |
地区名 | 6AFIUO48 | |
内容分類 | 荷札 | |
国郡郷里 | 筑前国〈大宰府〉・筑前国嘉麻郡 | |
人名 | ||
和暦 | ||
西暦 | ||
木簡説明 |
■研究文献情報
(7)「筑紫大宰進上筑前国穂波」
⇒⇒筑前国穂波郡からの進上品を書いた木簡の断片か。
詳細
URL | https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AFIUO48000152 | |
---|---|---|
木簡番号 | 0 | |
本文 | 筑紫大宰進上筑前国穂波→ | |
寸法(mm) | 縦 | (74) |
横 | 17 | |
厚さ | 2 | |
型式番号 | 039 | |
出典 | ![]() | |
文字説明 | ||
形状 | ||
樹種 | ||
木取り | ||
遺跡名 | 平城京左京三条二坊八坪二条大路濠状遺構(南) | |
所在地 | 奈良県奈良市二条大路南一丁目 | |
調査主体 | 奈良国立文化財研究所平城宮跡発掘調査部 | |
発掘次数 | 197 | |
遺構番号 | SD5100 | |
地区名 | 6AFIUO48 | |
内容分類 | 荷札 | |
国郡郷里 | 筑前国〈大宰府〉・筑前国穂浪郡 | |
人名 | ||
和暦 | ||
西暦 | ||
木簡説明 |
■研究文献情報
(8)「糟屋郡紫草廿根」
⇒筑前国糟屋郡産の紫草
⇒白色のかれんな花を咲かせる、ムラサキ目ムラサキ科ムラサキ属の多年生植物。紫草の根
⇒用途としては、シコニンという赤色の色素は、ツバキの灰(アルミニウムイオン)とまぜると、天然の紫色染料の原料となる。
⇒本木簡では不明であるが、これも貢納品であった可能性もある。
⇒なお、「(肥後国)合志郡紫草大根四百五十編」(https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/MK008099000226)とあり、肥後国からの進上品もあった。
■詳細
URL | https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/MK008099000213 | |
---|---|---|
木簡番号 | 193 | |
本文 | 糟屋郡紫草廿根 | |
寸法(mm) | 縦 | 128 |
横 | 22 | |
厚さ | 5 | |
型式番号 | 032 | |
出典 | 木研8-99頁-2(13)(大宰府木簡概報2-193) | |
文字説明 | ||
形状 | ||
樹種 | ||
木取り | ||
遺跡名 | 大宰府跡不丁官衙地区 | |
所在地 | 福岡県太宰府市大字観世音寺字不丁 | |
調査主体 | 九州歴史資料館 | |
発掘次数 | 87 | |
遺構番号 | SD2340 | |
地区名 | ||
内容分類 | 付札 | |
国郡郷里 | 筑前国糟屋郡 | |
人名 | ||
和暦 | ||
西暦 | ||
木簡説明 |
■研究文献情報
*********************************
詳細
URL | https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/MK006096000010 | |
---|---|---|
木簡番号 | 157 | |
本文 | 肥前国松浦郡神戸調薄鰒→ | |
寸法(mm) | 縦 | (187) |
横 | (18) | |
厚さ | 3 | |
型式番号 | 081 | |
出典 | 大宰府木簡概報2-157(日本古代木簡選・木研6-96頁-(10)・大宰府58概報-(14)) | |
文字説明 | ||
形状 | 下欠(折れ)、左二次的切断、右二次的切断。 | |
樹種 | ||
木取り | 板目 | |
遺跡名 | 大宰府跡不丁官衙地区(右郭六条一坊・二坊) | |
所在地 | 福岡県太宰府市大字観世音寺字不丁 | |
調査主体 | 九州歴史資料館 | |
発掘次数 | 85 | |
遺構番号 | SD2340 | |
地区名 | ||
内容分類 | 文書? | |
国郡郷里 | 肥前国松浦郡 | |
人名 | ||
和暦 | ||
西暦 | ||
木簡説明 |
■研究文献情報
(8)「肥前国松浦郡神戸調薄鰒」
*『延喜式』主計式に見えるだけでも 20 の国・島の税物として多様なアワビの加工品が合記載されている。神饌や供御,節会等の饗宴で大量に調達された。その理由は長期保存食品であったからだろう。
⇒十世紀に編纂された『延喜式』主計上の諸国調条に見る肥前国から献上される調では、
「御取鰒三百六十四斤、短鰒五百三十四斤、長鰒24斤、羽割鰒24斤、熬海鼠301斤14両」
とある。
⇒「薄鰒」(ウスアワビ)の付札。「編」は鰒をまとめた単位。鮑をマワシナガラ薄く剥き、貯蔵用に干した物
⇒「御取鮑」は「身取鮑」とも表記。鰒を薄く裂いて、干し、数枚を合わせてその一端を細縄で結んだ物
詳細
URL | https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/MK006096000010 | |
---|---|---|
木簡番号 | 157 | |
本文 | 肥前国松浦郡神戸調薄鰒→ | |
寸法(mm) | 縦 | (187) |
横 | (18) | |
厚さ | 3 | |
型式番号 | 081 | |
出典 | 大宰府木簡概報2-157(日本古代木簡選・木研6-96頁-(10)・大宰府58概報-(14)) | |
文字説明 | ||
形状 | 下欠(折れ)、左二次的切断、右二次的切断。 | |
樹種 | ||
木取り | 板目 | |
遺跡名 | 大宰府跡不丁官衙地区(右郭六条一坊・二坊) | |
所在地 | 福岡県太宰府市大字観世音寺字不丁 | |
調査主体 | 九州歴史資料館 | |
発掘次数 | 85 | |
遺構番号 | SD2340 | |
地区名 | ||
内容分類 | 文書? | |
国郡郷里 | 肥前国松浦郡 | |
人名 | ||
和暦 | ||
西暦 | ||
木簡説明 |
■研究文献情報
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