2026年6月12日金曜日

木簡「・□□〔決明ヵ〕子+桃+桂心+白芷+車前子+防風+柏実+右九物

 本木簡で重要な視点は、

*律令国家における薬方物流システム

である。7世紀末の日本列島が東アジア交易圏と国内流通網を統合していた史料だからである。


『延喜式』『延喜式』巻37「典薬寮・諸国進年料雑薬」記載の貢納国一覧


生薬名現在の植物主な貢納国
決明子エビスグサ種子美濃・近江・播磨・讃岐など
桃仁(桃)モモの種子大和・河内・山城・近江など
桂心ニッケイ樹皮主として輸入品・大宰府経由
白芷ヨロイグサ類根山城・近江・丹波など
車前子オオバコ種子大和・山城・近江・美濃・下総など17国
防風ボウフウ根丹後・若狭・出雲・石見など日本海側諸国
柏実コノテガシワ種子三河・遠江・駿河・伊豆・甲斐の5国

特に重要なのは


詳細

URLhttps://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/6AJLDB64000108
木簡番号1722
本文・□□〔決明ヵ〕子四両桃四両桂心三両白芷三両\○□○車前子三両防風三両・/○□両/柏実一両∥○右九物
寸法(mm)173
25
厚さ4
型式番号011
出典藤原宮4-1722(木研11-33頁-2(3)・飛9-11上(68))
文字説明裏面「柏」は異体字「栢」。
形状上切断後粗い削り、下削り、左削りヵ、右削りヵ。裏面下端部は墨を塗っている。
樹種ヒノキ科#
木取り板目
遺跡名藤原宮跡西面南門地区
Fujiwara Palace Site (West Side of the South Gate Sector)
所在地奈良県橿原市四分町
調査主体奈良国立文化財研究所飛鳥藤原宮跡発掘調査部
Department of Asuka and Fujiwara Palace Sites Investigations, Nara National Research Institute for Cultural Properties
発掘次数藤原宮第58-1次
遺構番号SD1400
地区名6AJLDB64
内容分類文書
国郡郷里 
人名
和暦
西暦
遺構の年代観694-710
木簡説明上端切断後粗い削り、下端削り、左右両辺削りか。裏面下端部は墨を塗っている。薬物の支給に関わる文書ないし薬物の処方に関する文書であろう。元来、表面二行目と裏面一行目の判読できない箇所に一つずつ薬名が記されていたとすれば、九種類の薬名が記されていたことになり、「右九物」の記載と品数は一致する。「決明子(ケツメイシ)」は、マメ科の一年草ケツメイ(和名コエビスグサ)の成熟した種子に比定される。『本草集注』草木中品、『本草和名』草上・『医心方』に「衣比須久佐」、内閣文庫本などの『延喜式』典薬寮に「エヒスクスリ」(58武蔵年料雑薬条)とみえ、『延喜式』典薬寮に、駿河など十箇国の年料雑薬としてみえる(54駿河年料雑薬条など)。「桃(トウ)」は、後掲「桃人(トウニン)」(一七五二)を参照。「桂心(ケイシン)」は、クスノキ科の常緑高木肉桂(ニッケイ。和名ケイ)の幹皮と枝皮に比定される。『本草集注』草木上品に「桂」、『本草和名』木上、『和名抄』に「桂女加豆良」とみえる。藤原宮跡北辺地区から「桂心一両二分」(奈良県『藤原宮』八一号)、飛鳥池遺跡北地区溝SD一一一〇(第八四次調査)から「桂心二両」(『飛鳥藤原京木簡』一―七一一)と記した木簡が出土している。桂心は、『延喜式』典薬寮の諸国進年料雑薬にみえず、国内で自給できなかったらしい。天平勝宝八歳(七五六)六月二十一日献物帳(種々薬帳〈正倉院文書北倉158二巻の内。『大日本古文書』四―一七三頁〉)にみえる大仏に献納された正倉院薬物の桂心は、華南を産地とするものであり、また、奈良時代には新羅との交易で入手した例が知られる(天平勝宝四年六月十五日中臣伊勢連老人買物解〈尊経閣文庫所蔵文書。『大日本古文書』二十五―四五頁〉など)。「白芷(ビャクシ)」は、セリ科の多年草興安白芷(コウアンビャクシ。和名ヨロイグサ)などの根に比定される。『本草集注』草木中品、『本草和名』草中に「加佐毛知、佐波宇止、与呂比久佐」、『医心方』に「加佐毛知、与呂比久佐、佐波宇止、佐波曽良之」、内閣文庫本などの『延喜式』典薬寮に「ムマクサ」(21近衛府雑薬条)、「ミラネクサ」(50伊勢年料雑薬条)とみえ、『延喜式』典薬寮に、大和など十八箇国の年料雑薬としてみえる(46大和年料雑薬条など)。藤原宮跡北辺地区から「白芷二両」(奈良県『藤原宮』七四号)と記した木簡が出土している。「車前子(シャゼンシ)」は、オオバコ科の多年草車前(シャゼン。和名オオバコ)などの種子に比定される。『本草集注』草木上品、『本草和名』草上に「於保波古」、『医心方』に「於保波己」とみえ、『延喜式』典薬寮に、大和など十七箇国の年料雑薬としてみえる(46大和年料雑薬条など)。藤原宮跡北辺地区から「車前子一升」(奈良県『藤原宮』七五号)と記した木簡が出土している。「防風(ボウフウ)」は、一七二一。「栢実(ハクジツ)」は、ヒノキ科の常緑高木側柏(ソクハク。和名コノテガシワ)の種子に比定され、「栢子仁(ハクシジン)」に同じ。『本草集注』草木上品、『本草和名』木上に「比乃美、加倍乃美」、『医心方』に「比乃美」とみえ、『延喜式』典薬寮に、参河など五箇国の年料雑薬としてみえる(52参河年料雑薬条など)。
DOIhttp://doi.org/10.24484/mokkanko.6AJLDB64000108
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