九州各地には、
『延喜式』に、
巻22/民部上/8/西海道筑後国上〈管〉〈御原 生葉 竹野 山本 御井 三瀦 上妻 下妻 山門 三毛
とある。
『倭名類聚抄』に、
巻9・国郡部第12・豊前国第127・上毛郡・14丁裏7行目 上毛郡
巻9・国郡部第12・豊前国第127・下毛郡・14丁裏9行目 下毛郡
巻8・国郡部第12・周防国第117・熊毛郡・20丁裏8行目 熊毛[久万介]
巻9・国郡部第12・大隅国第132・熊毛郡・21丁裏7行目 熊毛郡
などに見る「毛」郡が存在する。これに関して、我が仮説は「毛(ケの乙類=け=食べ物)」の等式を想定したい。
なお、この延長線上に、「上野国(上+ツ+け)」「下野国(下+ツ+け)」に共通する「け」がある。
「け〔食〕(名)食物。「大御気に仕へまつる とをちこちにいざり釣りけり」(万4360)「五十鈴(イスズ)の宮に御気(ケ)立つと打つなる瓢(ヒサ)は宮もとどろに」(皇太神宮儀式帳)「吾妹子が裳引の姿朝に食(ケ)に見む」 (万767)「う飼(ケ)飯(ヒ)て寝(ネ)れど」(万767) 「食ヶ」(名義抄)【考】霊異記に「綾君之家、為所乞食、日々不闕、餔〈計古止〉時而逢」(中一六話)のようにケコ トの例があるほかは、接頭語ミを冠し たものばかりであるが、第三例のよう に「食」の字を乙類のケの仮名に借りることがあり、「餔」は第四例のように「飯」を伴ってケヒを写すのに用いられている」(『上代語辞典』三省堂、279頁)
したがって、「三毛」とは「御+食べ物」であり、下記の辞典の説明の通り「熊毛」とは「熊+毛⇒クマ+ケ⇒神に供える食べ物」の意味である。
「くま〔奠}】(名)神に供える物。「適殯宮 而慟哭焉、於是奉奠奏楯節舞 」(持統紀二年)「彼稲伊佐波登美神乎為弖、 抜尓令抜、皇太神乃御前尓懸久真尓懸奉始支」(倭姫世記)「糈久万之禰、精 米所以享神也」(和名抄)【考】「奠」の字は神に祭りのための品物を出す意。第2例のカケクマは右の例から考えて、稲の穂のついたままのものをいうらしい。兵庫県北部から鳥取東部地方にかけて行われるイナグマは、稲などを積み重ねたものをさすが、その名残化とみられる。また、神に供える稲を作る田をクマシロという。地名として 「石見国邑知郡神稲(久末之呂)・淡路国三原郡神稲(久万之呂)」(和名抄廿巻本)がある。「三吉野に有りし熊志禰」(続後紀嘉祥二年)のタマシネは人名であるが、「味稲(ウマシネ)」(万385)「美稲(ウマシネ)」(懐風藻) とも伝えられていて、シネは稲であり、奠稲(クマシネ)という語の存在が推定される。」(『上代語辞典』269頁)
を参考にすればよい。つまり、「クマ」は「神への供える米」の意味である。
なお、この仮説は筆者の創見ではなく、すでに『角川日本地名大辞典』などでも記述されていることを付記したい。
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