2025年9月1日月曜日

太宰府は「朴消」の集積地+古代薬材料のデパート

 『続日本後紀』承和 7 年(840)2月庚申(13日)条に、

「令大宰府停止例進朴消

 とある。

この「朴消」とは何か。

そのためには、正倉院所蔵「種々薬帳」(大日本古文書』40171。「国家珍宝帳」 とともに天平勝宝8年(756)6月21 日(聖武天皇七七忌)の献物帳、縦約26cm、長さ約2m 。45個の「天皇御璽印」が3段に 捺印。巻尾の署名は「国家珍宝帳」 と同じ5名 藤原仲麻呂、藤原永手、巨萬福 信、賀茂角足、葛木戸主)を最初に目にしなくてはならないだろう。記載されている薬品名は60種。そのうち29種が正倉院に、現存。10種は片鱗などの断片が残存し、21種は散逸。その品目 (帳内薬物)のうち38品目現存。 『種々薬帳』に書かれていない薬 物(帳外薬物)16品目現存。

<詳細は真柳誠先生の紹介を参考の事。

漢方史料館(93)正倉院の唐代八世紀前薬物群

 その中で「粉」は「雲母粉」1種類。粉状体と想像される朴消(含水硫酸ナトリウムと芒消(硫酸マグネシウム)の2種類、そして、粉砕して用いられたと思われる寒水石(炭酸カルシウム)、理石(硫酸カルシウム)や龍骨、龍角と呼ばれる化石鉱物系薬物が約20種類記載されている。

さて、朴消とは、すでに下記の「種々薬帳」にある通り「鉱物性生薬」の一つである。化学分析によって、比較的純度の低い含水硫酸ナトリウムの結晶であると判明している。


適応疾病

腹部膨満感、腹痛、便秘、高熱、意識障害、うわごと、心窩部の張り、心窩部の痛み、ノドの腫れ、ノドの痛み、口内炎、眼の充血、眼の痛み、皮膚化膿症、痔疾、せき、黄色い痰、粘りのある痰など

生薬 - 朴消(ぼくしょう) (=朴硝)の効果・効能・対象症状・薬味・薬性・原材料 | イアトリズム事典  知っておきたい 『漢方生薬』


この朴消を常備薬とした聖武天皇はいかなる疾病を持っていただろうか。

さて、ここからが本論である。840年に至り、朴消(硫化ナトリウム)を都に献納する必要は無くなったが、大宰府はそれまでどこで朴消を入手していただろうか。

万人が想起するのは、正倉院蔵「鳥毛立女屏風」下貼反故文書断片(天平勝宝4年)であろう。買物申請帳・買新羅物解と呼ばれる大蔵省あるいは内蔵寮へ提出された文書である。

この文書に関しては、東野秀之氏の専論「  }があり、新羅から舶載してきた品々(香料・薬物・顔料・染料・金属・器物など)の名称を知る。東野氏が整理した薬物類は

①麝香

呵莉勒

③人参

④桂心

⑤太黄

⑥牛黄

⑦密抜

⑧甘草

⑨宍縦容

⑩遠志

臘蜜

芒消

であり、我々のtargetである朴消は見当たらない。しかしこの時の新羅商船に舶載されていなかっただけで、大宰府での入手ルートは新羅との交易品であったと推定しても大きな誤りを犯すことはないだろう。むしろ大宰府鴻臚館周辺に居住する新羅人商人たちがブローカーとなって、本国との搬入ルートを確保して、大宰府に舶載した。大宰府に将来された薬品などを取りまとめて、新羅商人のビジネスパートナーである日本人商人(もしくは新羅人と日本人のハーフか、長期間朝鮮半島に滞留して交易に従事した日本人など)と共に、瀬戸内海経由で難波の交易場所に向かったに違いない。難波での商取引で、いくらの利潤が上がるのかは新羅から品々を持参した商人たちにとって、最大の関心事であった。中継地である博多において、安々と新羅人商人が他人に搬入した品々を、小切手で他者に手渡したりしないはずです。たとえどのような長い取引相手であったとしても、ビジネスはビジネスであり、たとえ身内でもその対価ができるまでは信用することはなかった。荒波を越えて渡って来た商人たちはだれひとり騙されないように慎重なビジネスを心掛けたはずであり、「お人よし」でなかっただろう。




現代中国における朴消採集地

主に海辺のアルカリ性土壌地域、鉱泉、塩田近くの湿った洞窟で生産されます。 内モンゴル、河北、天津、山西省、陝西省、青海省、新疆ウイグル自治区、山東省、江蘇省、安徽省、河南省、湖北省、福建省、四川省、貴州省、雲南省など

 

<백제신집방百濟新集方>, <신라법사방新羅法師方>, <고려노사방高麗老師方>


(1)朴消に関する韓国の説明①

예컨대 국내외 학자들이 명료하게 포착하지 못했던 대황(大黃), 청대(靑黛), 승마(升麻), 감초(甘草), 호동률(胡桐律), 박소(朴消), 청목향(靑木香) 등의 명칭을 명확히 밝혀내었고, 각각의 약재 이름 아래 적혀있던 약재의 무게와 가공법을 판독함으로써 이것이 실제 투약을 위한 처방기록이었음을 분명히 밝혀졌다. 또한 이 처방은 고대 동아시아의 의서인『천금방(千金方)』이나 『외대비요(外臺秘要)』, 『의심방(醫心方)』 등에 실려 있는 어떤 처방과도 유사한 점이 없어 신라 의사의 독자적인 처방인 것으로 판명되었다.
특히 세로쓰기로 되어 있는 약재명들의 첫머리에서부터 오른쪽 옆으로 내려 그은 기다란 꺽쇠 부호가 있는데 지금까지 무슨 의미인지 아무도 명료하게 해석해 내지 못한 상황이었다. 그런데 이것은 조선시대까지도 관용적으로 사용해온 방법으로 의원의 처방에 따라 약재를 배분할 때 차례대로 분배를 마친 약재명 위에 이미 조제를 마쳤다는 의미로 약제사가 표기하던 방식과 일맥상통하는 것이다. 아울러 이 기호는 약재명 위에 이미 조제과정을 마쳤다는 의미에서 ‘了’[마칠 료]라고 표시하던 습관에서 기인한 것으로 여겨진다. 



(2)朴消に関する韓国の説明①




(3)大紫金皮散の成分


.강진향A降眞香 37.5 g
2.당귀A當歸 37.5 g
3.대황A大黃 56.25 g
4.도인A桃仁 37.5 g
5.무명이無名異 37.5 g
6.보골지補骨脂 37.5 g
7.속단A續斷 37.5 g
8.우슬A牛膝 37.5 g
9.자금피A紫金皮 37.5 g
10.포황A蒲黃 37.5 g
11.호박琥珀 37.5 g
12.박소朴消 56.25 g

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正倉院薬物 帳内薬物(60品目)

 〈植物性生薬〉 蕤核 小草 畢撥 胡椒 阿麻勒 菴麻羅 黒黄連 青葙草 白皮(及) 雷丸 鬼臼 檳榔子 宍縦容 巴豆 厚朴 遠志 呵梨勒 桂心 芫花 人参 大黄 甘草 蔗糖 胡同律 防葵 狼毒 冶葛


帳内薬物(60品目)

 〈動物性生薬〉 麝香 犀角 犀角 犀角器 元青 紫鑛 無食子 臈蜜 猬皮 新羅羊脂 内薬 

〈鉱物性生薬〉 朴消 寒水石 理石 禹餘粮 大一禹餘粮 青石脂 赤石脂 鍾乳床 芒消 石塩 雲母粉 蜜陀僧 戎塩 

帳内薬物(60品目)

 〈化石生薬〉 龍骨 五色龍骨 白龍骨 龍角 五色龍歯 似龍骨石 〈配合薬その他〉 紫雪 金石陵 石水氷 帳外薬物 雄黄,白石英,滑石,琥碧,青木香,木香,丁香,蘇芳, 竹節人参,紫鉚,没食子之屬,薫陸,烏薬之屬, 沈香及雑塵,紫色粉,白色粉,獣胆,草根木實數種, 礦石數種,薬塵,丹,銀泥,合香,浅香,安息香 





薬草に親しむ-正倉院に伝わる薬物60種のリスト 種々薬帳(しゅじゅやくちょう)

野尻佳与子氏作成(2010年11月)

「種々薬帳」に記載されている60種類の薬物
(◎印=植物性生薬、△=動物性生薬、□=鉱物性生薬、◆不明)
(1)麝香(ジャコウジカの雄の香のう分泌物)
(2)犀角(サイカク・インド産クロサイの角)
(3)犀角(サイカク・インド産クロサイの角・犀角の記載2つあり)
(4)犀角器(サイカクキ・犀角でつくった盃)
(5)朴消(ボウショウ・含水硫酸ナトリウム)
(6)ずい核(ズイカク・バラ科の成熟した果実の種子)
(7)小草(ショウソウ・中国産の遠志をいうが現存品はマメ科植物の莢果)
(8)畢撥(ヒハツ・インド産ナガコショウ)
(9)胡椒(コショウ・インド産コショウ)
(10)寒水石(カンスイセキ・方解石(炭酸カルシウムの結晶))
(11)阿麻勒(アマロク・亡失したがコショウ科アムラタマゴノキの果実と考えられている)
(12)菴麻羅(アンマラ・トウダイグサ科アンマロクウカンの果実片、種子)
(13)黒黄連(コクオウレン・現存)
(14)元青(ゲンセイ・亡失のため不明)
(15)青しょう草(セイショウソウ・亡失)
(16)白及(ハクキュウ・ラン科シランの球根)
(17)理石(リセキ・繊維状石膏・含水硫酸カルシュウム)
(18)禹余粮(ウヨリョウ)
(19)大一禹余粮(ダイイチウヨリョウ)
(20)竜骨(リュウコツ・哺乳動物の骨の化石)
(21)五色竜骨(ゴシキリュウコツ・化石生薬・亡失)
(22)白竜骨(ハクリュウコツ・化石鹿の四肢骨)
(23)竜角(リュウカク・化石鹿の角)
(24)五色竜歯(ゴシキリュウシ・ナウマン象の第三臼歯)
(25)似竜骨石(ニリュウコツセキ・化石生薬 化石木)
(26)雷丸(ライガン・サルノコシカケ科ライガン菌)
(27)鬼臼(キキュウ・ユリ科マルバタマノカンザシの根茎・現在はメギ科ハスノハグサ)
(28)青石脂(セイセキシ)
(29)紫鉱(シコウ)
(30)赤石脂(シャクセキシ)
(31)鍾乳床(ショウニュウショウ)
(32)檳榔子(ビンロウジ・ヤシ科ビンロウの種子)
(33)宍(肉)縦容(ニクジュヨウ・ハマウツボ科ホンオニク)
(34)巴豆(ハズ・トウダイグサ科の種子)
(35)無(没)食子(ムショクシ)
(36)厚朴(コウボク・現在はモクレン科ホウノキ属だが現存品は別物のようである)
(37)遠志(オンジ・ヒメハギ科イトヒメハギの根)
(38)呵(訶)梨勒(カリロク・カラカシ・シクンシ科ミロバランノキの果実)
(39)桂心(ケイシン・クスノキ科ニッケイの樹皮)
(40)芫花(ゲンカ・フジモドキの花蕾)
(41)人参(ニンジン・ウコギ科コウライニンジンの根)
(42)大黄(ダイオウ・タデ科ダイオウの根茎)
(43)臈蜜(ミツロウ・トウヨウミツバチの蜜蝋)
(44)甘草(カンゾウ・マメ科カンゾウの根)
(45)芒消(ボウショウ・含水硫酸マグネシウム)
(46)蔗糖(ショトウ・イネ科サトウキビの茎から得られる、いわゆる砂糖)
(47)紫雪(シセツ・鉱物八種の配合剤)
(48)胡同律(コドウリツ・樹脂の乾燥物)
(49)石塩(セキエン・塩化ナトリウム)
(50)い皮(イヒ・ハリネズミの皮)
(51)新羅羊脂(シラギヨウシ)
(52)防葵(ボウキ・現在はツヅラフジ科シマサスノハカズラだが亡失のため不明)
(53)雲母粉(ウンモフン)
(54)蜜だ(陀)僧(ミツダソウ)
(55)戎塩(ジュエン)
(56)金石陵(キンセキリョウ)
(57)石水氷(セキスイヒョウ)
(58)内薬(ナイヤク・亡失して不明)
(59)狼毒(ロウドク・亡失して不明だが、サトイモ科クワズイモの根茎、トウダイグサ科マルミノウルシの根、ジンチョウゲ科の根などが考えられている)
(60)冶葛(ヤカツ・断腸草あるいは胡蔓藤のクマウツギ科)


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