周知の地震であるので、この資料の説明は割愛する。
重要な視点は、すでに災害科学の専門家によって、869年ごろの海岸線と津波被害の実態まで解明されつつある。これこそ古代学に積極的に援用すべきデータである。
①貞観十一年五月二十六日(西暦869年7月9日)に陸奥国巨大地震
この地震の専門家による説明は下記の通りである。
地質調査総合センター研究資料集、 no. 630
西暦869年 貞観地震の復元
Reconstruction of AD 869 Jogan earthquake
田村明子・澤井祐紀・黒坂朗子
地質情報研究部門 地殻岩石研究グループ
海溝型地震履歴研究グループ | メンバー紹介
津波浸水履歴図 (2025/1/29更新)
海溝型地震は2011年東北地方太平洋沖地震のようにまれに巨大化し,大きな津波を発生させることがあります.そのような巨大地震は数百年以上の長いくり返し間隔を持つため,正確な規模や長期的な発生時期を予測するには,過去にどのような地震や津波が起きていたのかを数千年オーダーで遡って解明する必要があります.そこで海溝型地震履歴研究グループでは,歴史記録や地形・地質に記録された痕跡の調査から,過去の海溝型巨大地震の発生時期や規模を解明し,地球物理学的な検討を通して震源域・波源域を復元する研究を行っています.特に東日本大震災以降は最大クラスの地震や津波について,より具体的な上限規模を提示し,今後の想定に役立てることを目指しております.また各地で得られたデータについては,津波浸水履歴情報として公開していき,被害予測に貢献する成果を社会に提供いたします.
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石巻平野における869年貞観地震と2011年東北地方太平洋沖地震における津波浸水域の比較.国土地理院発行5万分の1地形図「石巻」「松島」を使用.Sawai et al. (2012) のmodel 10に基づく. |
更に紹介すれば、
沢井祐樹氏の報告は貞観地震の本質を教える。
「仙台平野における貞観津波の痕跡調査」
ちなみに、貞観大地震(869)で大規模災害にあった多賀城や陸奥国分寺の再建・復興事業を推し進めるために、新羅人瓦工の潤清・長焉・真平が派遣されたことは周知のとおりである。 両遺跡からは、新羅系宝相華文軒丸瓦が出土しており、彼ら3名の技術的指導の下で、瓦が生産されたと推測できる(舘内魁生(東北大学埋蔵文化財調査室)「2つの“立体”的視点から探る瓦当文様と製作技術の伝播 」など)。
しかしながら、一方で、その通説に否定的な意見もある。
「、燕沢遺跡は宮城郡附属
の寺院、菜切谷廃寺は賀美郡あるいは城生柵の附属寺院などと考えられている(諸説あり)。
興味深いことに、両寺院では上総系の四弁蓮華文軒丸瓦が共通して採用されており、早い段
階から人的・技術的な交流があったものと考えられる」
この館内氏の指摘を踏まえて、あえて仮説を提出するならば、2段階説に至る。
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