2025年1月19日日曜日

出雲国漆治郷犬上里辛人部近女について

 *出雲国大税賑給歴名帳に「漆治郷犬上里辛人部近女」とある。

 最新の本文校訂結果を盛り込んだ『出雲国風土記ー校訂・注釈篇』(島根県古代文化センター編、八木書店、2023年刊)を尊重して、私見として

漆治郷

と定めたい。『出雲国風土記ー校訂・注釈篇』補注524の教えによると、現在でも

*島根県出雲市直江町小字漆治

の小字名がある。したがって、この付近に漆治郷犬上里の存在を推定してよいだろう。

 本稿の関心は、

*出雲国大税賑給歴名帳「漆治郷犬上里辛人部近女」

の「辛人部」にある。結論から言えば、この「辛」をKaraと読み、「韓」と同一漢字音だと想定したい。したがって、このページ「漆治郷犬上里」に居住する渡来系女性(    (韓人=辛人)「近女」の名前の記載があったという仮説に想到する。

 管見によれば、この「女」は一般名詞であると理解しても奇妙ではないだろう。そうであれば、残りの一字「近」を「キン」もしくは「コン」の読みが許されれば、この漢字音を「金」と読み替えて、「金+女」だと解釈したい。つまり「金(氏)の女(むすめ or 女性)」だと。当然ながら傍証はなく、あるのは「同一漢字音」による連想であることを残念に思う。

 朝鮮半島では、「姓氏の『姓』+女」という表記法が存在していたからである。『朝鮮金石総覧』(朝鮮総督府、大正8年)に、そのを見る。


⇒「出雲国大税賑給歴名帳」は、天平11年(739)に編纂された人名帖。出雲郡・神門郡の一部を記録。「正倉院文書」正集巻31~33、塵芥巻1にある、『大日本古文書 編年文書』 に翻字、『正倉院古文書影印集成』(八木書店)に影印、、『松江市史 資料編3古代・中世Ⅰ』(2013)に収録


この写真の出典は、Yahoo地図。



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