日本学士院賞に輝いた『新撰姓氏録』の研究』全10巻、吉川弘文館の著者、佐伯有清先生(1925ー2005)のご生前、拝眉の栄を賜った機会がかずかずあった。博識で、篤実な研究者であり、寸暇を惜しんで研究に邁進なさっていた。
先生の聲咳に接することで、多くの研究ヒントや論文執筆などに私にとって裨益するところ大であった。その後、若輩の私にも佐伯先生から論文集執筆のお誘いを受けたりしたこともあった。
そうした折には、我が勉強不足によって、佐伯先生に直接に『新撰姓氏録』に関するお尋ねすることは皆無であった。
さて、例えば、『新撰姓氏録』左京諸蕃下に見る、
「広田連、百済国の人、辛臣君自り出つ」
とある。先生のご研究は、「辛臣君」を「しんしんくん」と読む(考証編、第5巻、34頁)とある。
先生のご関心が辛広浜と広田連広浜などを同一人物に比定することにエネルギーを費やすことにあった。
ふと視点を変えると、この「辛」氏を「カラ」と読めば、佐伯先生が否定なさった「辛(カラ)氏」と「唐(から)氏」とを同一視する可能も生じる。
なお、加羅国人が百済国人だと自称する例は散見する。
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