2026年7月20日月曜日

論文題目:「律令制下における国府アーカイブズの研究」(第1稿)ーーだから国守大伴家持は忙しい

 ①問題の所在:「万葉の歌人大伴家持は、天平18年(746)8月に越中国司として赴任し、約5年間で家持自身の歌223首作った。そこで彼は文学者としての多忙であったと想定されてきたが、日々膨大な行政実務に追われる地方長官でもあったことは忘れがちであった。では、国司大伴家持はなぜそれほど多忙であったのか。その理由を国府で作成・管理された文書群の構造から解明することが、本稿の目的である。」

 分析視点:律令国家とは、国府を中核として、人・物資・情報・文書が相互に循環する広域行政ネットワークであったと設定することにある。

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<以下は、論文のFrameworkである。本論文の成稿化した文章は別途発表する。


論文題目:「律令制下における国府アーカイブズの研究」(第1稿)

律令制下の国府では、多種多様な紙媒体文書が作成・保管・運用された。これらは行政機能からみると、租税・戸籍・貢進・考課・進上・行政命令など約14系統の文書群(Record Groups)に大別することができ、その下位には税帳・計帳・考文など約20~30の文書群が存在した。さらに、『公式令』・『延喜式』に規定される個別の帳簿名や文書様式まで含めると、その種類は約80種類に達する。また、各文書については、本帳・案(office copy)・写・勘(監査用)など複数部が作成・保管されたため、実際に国府で管理・運用された紙媒体文書の冊数は、その種類数を大きく上回っていた。

本稿でいう「国府」とは、特定の一国を対象とするものではなく、律令国家を構成した約六十余国の国府に共通して存在した行政組織を指す。各国には地域差や運用上の相違が認められるものの、律令法制に基づく共通の文書体系が整備され、それぞれの国府において同様の文書群(Record Groups)が形成されていたと考えられる。

本稿では、まず『公式令』『延喜式』および現存する古文書・木簡などから国府文書の体系を復元し、その上で出雲国をはじめとするいくつかの国を事例として取り上げ、文書作成・管理の地域的差異と共通性を検討する。

<本論>

いまさらの概説的な整理となるが、律令制において各国では膨大な書類が作成された。

この点では、鐘江宏之『国府機構の形成と文書行政』は優れた研究成果である。

国府機構の形成と文書行政 - 国立国会図書館デジタルコレクション

本稿では、鐘江氏らの先行研究を踏まえて、本稿の論者の観点を国府アーカイブズ(Provincial Archives)と定めて、改めて整理しなおした研究である。

律令制下の国府では、多数の紙媒体文書が作成・保管・中央へ進上された。行政機能からみると、おおむね13系統に整理することができる。一方、『公式令』・『延喜式』などの法令・格式に現れる個別の帳簿名・文書様式まで数えると、80種類以上に及ぶ。次は、そのリストである。

<1>税帳系(租税・財政管理)

→国府財政の全ワークフローを網羅する体系

郡衙 → 国府 → 主計寮・民部省へと連動する、律令国家の財政オペレーションの中核

→租税・正税・出挙・官田収入など、国府財政を管理する帳簿群。

  • 正税帳:国府財政の“決算書”。 租・調・庸・出挙利稲など、郡から上がった全税目を統合した最終帳簿。 主政・主帳が中心となり、国司が検印。
  • 郡稲帳:郡衙で作成される稲の収納台帳。 郡司が郡内の田租(稲)を把握し、国府へ送付。 国府はこれを正税帳の基礎データとして使用。
  • 倉付帳:正倉への収納記録。 稲・調物がいつ、誰によって、どれだけ納められたかを記録。 実務担当は鎰取。
  • 出挙帳:出挙(貸付稲)の台帳。 貸付量・返納量・利稲を記録。 郡衙→国府→主計寮へと連動する重要帳簿
  • 損益帳:税物の欠損・余剰を記録。 虫害・風水害・盗難などによる損失を記載し、国司が中央へ報告。 郡司の責任問題にも直結。
  • 収納帳:郡から国府へ納められた税物の受領記録。
  • 支出帳:国府が支出した物資の記録。 国司巡行・駅家運営・官人給与などの支出管理
  • 納帳:納税物の個別記録。 郡司が戸口・田地に基づいて徴収し、郡衙作成
  • 受領帳:国司が郡司から税物を受領した記録。 国司交替時の「受領交替文書」の基礎データ
  • 官田地子帳:官田(公田)の収穫・地子(地代)を記録。 国府直営田の財政収入を管理
  • 運脚帳:税物の運搬記録。 郡→国府→都(正倉院)への輸送量・運脚人・日程記録。 
  • 輸送帳:運脚帳の上位帳簿。 国府から中央へ送る際の輸送記録。作成は 朝集使。
  • 貸付帳:出挙以外の貸付(布・調物など)の記録
  • 利息帳:出挙利稲・貸付利物の利息記録
  • 穀帳:穀物の在庫台帳。 正倉の積載量・古稲の処理・新稲との入れ替えを管理
  • 積帳:国府や郡衙において、租税・調庸・正税・貢納物などを「積み上げ(集計)」して作成した集計原簿。子国府内部管理用。


<2> 計帳系(戸籍・人口・土地管理)

⇒戸口・課丁・班田・課税基礎資料を管理する帳簿群である。

  • 戸籍:戸ごとの構成員(氏名・年齢・続柄・身分)を登録した基本台帳。人口把握・班田・課税・兵役の基礎
  • 計帳:課税・兵役対象者(課丁・正丁など)を中心に集計した帳簿。調・庸・兵役の基礎資料
  • 手実:戸主が自己申告した家族・財産などの。戸籍・計帳作成の基礎資料
  • 負名帳:負名(耕作者・納税責任者)の氏名と耕地を記録。租税徴収・土地管理台帳
  • 郷戸課丁帳:郷ごとの戸数・課丁数を集計した帳簿。調庸・兵役人数の把握
  • 田租帳:田地ごとの租税(租)の賦課・収納状況を記録。租税徴収
  • 浮浪帳:本籍地を離れた浮浪人を記録。戸籍管理・課税漏れ防止
  • 逃亡帳:逃亡した戸口・課丁を記録。課税・兵役逃れ防止
  • 班田帳:班田収授の対象者・支給面積を記録。班田収授の基礎台帳
  • 班給帳:実際に班給した口分田を記録。班田実態記録
  • 班収帳:死亡・転籍等により返還された口分田を記録。班田帳簿
  • 校帳:帳簿相互の照合・訂正結果を記録。帳簿のリニューアル記録簿。帳簿確認


<3>貢調系(調・庸・雑徭・貢進)

⇒中央へ納める物資・労役・運送を管理する帳簿群である。

  • 調帳:調(絹・布・糸・海産物・特産物など)の賦課・収納・納入状況を記録した帳簿。調の徴収・中央への送付
  • 庸帳:庸(労役または布代納)の賦課・収納状況を記録した帳簿。庸の徴収・管理・記録簿
  • 中男作物帳:中男(17~20歳前後)の作物納入状況を記録。中男作物の徴収・調進
  • 雑徭帳:雑徭(地方の労役)の賦課・出役状況を記録。労務管理
  • 雇役帳:雇役夫の雇用・勤務・給与などを記録した帳簿。官営工事・労務管理
  • 貢物帳:貢納すべき物資の品目・数量を記録。貢納物の管理
  • 調進帳:中央へ発送する物資の品目・数量・発送日などを記録。調・庸・雑物の送付管理
  • 貢進帳:朝廷・太政官・諸司などへ進上した貢納物を記録。貢進実績の管理
  • 運脚帳:運脚(運送人夫)・駄馬・船舶などの動員を記録。運送・輸送管理

(※運脚帳は租税輸送にも用いられるため、税帳系との関連も深い。

<4> 考課系(官人・人事管理)

⇒「国司以下の官人の任免・勤務・勤務評定・交代・事務引継ぎを管理する人事行政文書群」

  • 考文(考帳):官人の勤務実績・勤務成績・功過を記録した文書。昇進・叙位・考課
  • 解由帳:前任・後任国司間で引き継ぐ官物・文書・財産を一覧化した帳簿。官物管理・引継ぎ
  • 解由状:引継ぎが完了したことを証明する文書。解由審査・離任証明
  • 任替帳:官人の任免・交代・異動を記録した帳簿。人事管理
  • 勤仕帳:官人の出勤・勤務状況・勤務日数を記録。勤務管理
  • 番上帳:番上官人(一定期間中央へ出仕する官人)の勤務・交替を記録。番上勤務管理
  • 番替帳:番上・衛士・軍団兵などの交替日程・交替者を記録。勤務交替管理


<5>中央との文書往復系

⇒「国司が太政官・民部省その他の中央諸司へ公文を送達し、その受領・返却・照合を管理する文書群」

  • 公文目録:送付する公文書・帳簿の名称・通数を一覧化した目録。送付文書の確認・紛失防止
  • 遊牒;公文書に添付する送達状・送付状。文書送達・送付先への通知
  • 返抄:中央官司が文書を受領したことを証明する受領書・控え。到着確認・文書管理

<6> 行政命令管理文書系(国府内部行政)

⇒国司が郡司・郷司・在地官人・寺社・百姓などに対して、行政命令・裁定・通知を発する文書群である。

  • 国符:国司が発する正式な行政命令・指令文書。行政命令・徴税・労役・司法・寺社統制
  • 国司庁宣:国司庁の合議・裁定・許可を伝える文書。許認可・裁決・行政執行

<7> 軍事管理文書群

⇒軍団・兵士・兵器・軍馬・軍糧など、国府・軍団の軍事行政を管理する文書群である

  • 軍団帳:軍団の編成・兵員・勤務状況を記録
  • 兵籍帳:兵士の氏名・年齢・所属・勤務を記録
  • 兵器帳:武器・甲冑・弓矢などの保管・数量を記録
  • 馬帳:官馬・軍馬の頭数・飼養・貸与を記録
  • 軍粮帳:軍糧・兵站物資の備蓄・支給を記録
  • 駅馬帳:駅馬関係帳簿

軍事管理文書群は、軍団・兵士・兵器・軍馬・軍糧の管理にとどまらず、蝦夷征討・城柵防衛・駅伝輸送を支える兵站(ロジスティクス)を統括する文書体系として機能した。

<8>祭祀行政文書群

⇒官社・神戸・神田・祭料・神宝など、国府が管轄した祭祀行政を管理する文書群である。
  • 神戸帳:神戸(神社に属する戸)の戸数・負担・役務を記録
  • 神税帳:神税・神封など神社関係の租税・収入を記録
  • 祭料帳:祭祀に支出した祭料・供物・経費を記録
  • 神宝帳:神社の神宝・祭器を記録
  • 神田帳:神田の面積・耕作者・収穫を記録
  • 修繕管理帳:神社の管理・修繕などの記録。
  • 神封帳(または神封関係文書)


<9>訴訟・司法文書群

⇒裁判・刑罰・獄政・犯罪人管理など、国府の司法行政を管理する文書群である

  • 訴状:当事者が国司へ提出する訴願・告訴文書
  • 勘状:事件調査・審理結果・照会事項を記した文書
  • 獄帳:獄舎・囚人・刑罰執行状況を記録
  • 断獄帳:判決・量刑・刑罰執行を記録した帳簿
  • 囚帳:囚人の氏名・罪名・収監期間などの記録
  • 獄舎ロジスティクス文書(仮称):囚人の食事・衣服・寝具などが 一体化されたロジスティクス(物資供給)

<11>公文・行政記録文書群

⇒国府の日常行政において、公文の作成・伝達・保存および行政活動の記録に用いられる文書群である。行政を動かすための共通基盤となる文書であり、帳簿ではなく、公文書の様式(フォーム)

(A)文書様式(『公式令』)

  • 解:下級機関から上級機関への報告・申請
  • 移:官司相互の通知・連絡
  • 符:機関から下級機関への命令
  • 牒:官司間の照会・回答
  • 関:他官司への照会・依頼
  • 申文:官人の上申・申請
  • 上表:天皇への奏上文
  • 表:公文書の原案・起案
  • 案文:清書前の文案
  • 勘文:調査・審査・照合結果の報告

※これらは帳簿に属するカテゴリーではなく、公文書フォームである。

(B)公文行政記録管理文書群

行政事務の経過や施設・物資を継続的に管理する記録簿であり、行政全体を支える共通インフラ。

  • 計会帳:財政・会計の収支を照合・記録
  • 日録:日々の行政事務を記録
  • 公文日記:発受した公文書を日付順に記録
  • 国印簿:国印の使用状況を記録
  • 駅家帳:駅家・駅馬・駅子・駅田を管理
  • 伝馬帳:伝馬の配置・使用を管理
  • 船帳:官船・輸送船の管理
  • 工匠帳:工匠・技術者の勤怠・動員管理
  • 医帳:医師・医療業務の管理
  • 薬帳:薬品・薬草の出納管理

(約10種類)

<12>教育・学芸行政文書群

⇒国学・博士・学生・医師など地方教育行政を管理する文書群

  • 学生帳:学生氏名・出身地・年齢。学籍簿
  • 国学帳:国学運営記録。教科書などの書写・管理
  • 博士任帳:国博士の任免記録
  • 試験帳:学業試験・資格試験などの考課
  • 医学生帳:医学生管理
  • 釈奠帳:釈奠などの儒教関係記録

<13> 寺院行政文書群(国分寺・国分尼寺関係)

⇒国分寺・国分尼寺および官寺に関する造営・財政・人事・法会・寺領管理を行う文書群である。

  • 寺領帳:寺領田・寺田・寺封を記録
  • 寺田帳

    寺田の面積・耕作者・収穫を記録


  • 寺税帳

    寺院収入・免税関係を記録

    財政管理


  • 僧尼帳

    僧侶・尼僧の人数・所属を記録

    僧尼統制


  • 法会

    法会・読経・供養の実施記録

    宗教行事管理


  • 写経帳

    写経事業・経巻の管理

    国家仏教事業

  • 造寺帳

    国分寺造営・修理の人夫・資材を記録

    造営管理

  • 寺宝帳

    仏像・経巻・法具などの寺宝を記録

    寺宝管

<14>庸役・雑徭管理文書群

⇒そもそも庸とは単なる布の代納ではなく、本来は労働力・日数・勤務場所・食糧支給・代納を管理する制度である。想定される庸役として、官道建設・橋梁建設・国衙建築・城柵建設・国分寺造営・河川工事・堤防工事・雑役などがある。つまり人夫徴発・勤務管理・造営管理・工匠管理・工事物資管理セクションにおいて、それぞれ人的リソース管理文書を必要とした。

1)徴発関係

庸丁帳:庸役に出る成人男子

②差発帳:誰を派遣するか

③番役帳:勤怠

(2)勤務管理

勤仕帳:出勤および欠勤
役帳:勤務日数帳
番替帳:勤務シフト帳

(3)工事管理
造営帳:国衙・国分寺・国分寺・軍団・城柵
工匠帳:大工・瓦匠・鍛冶工などの名簿
作業帳:毎日の作業量

(4)物資管理:木材・鉄・銅・瓦・縄・釘など

⑩材木帳
⑪原材料帳

(5)庸役終了
勘文
雇役帳
雑徭帳:庸行政の中核帳簿


<15>公文書作成・伝達・審査過程における派生文書群:一つの帳簿が行政過程の中でどのような文書群を派生させたか

⇒律令国家では、「一つの帳簿=一冊」ではなく、作成・審査・提出・保管という行政過程ごとに複数の文書が存在した。現存する『正倉院文書』や木簡、さらに『令義解』『令集解』などからも、それを推測してみたい。

例えば、正税帳・出挙帳であれば、最低限でも次の種類が存在したに違いない。

文書名用途
正税帳本太政官・民部省提出用、正本
正税帳案国府で作成した草案・控え 
正税帳鏡提出前後の副本、「鏡」
正税帳勘勘会(監査・照合)用
正税帳改修正後の訂正版
正税帳勘返中央から返送された訂正結果を反映したもの
出挙帳本提出用
出挙帳鏡国府控え
出挙帳写副本
出挙帳勘監査用

実際には、さらに多くの関連文書が存在したはずである。

(1) 草案(草・初案):正式な帳簿を書く前の下書き。

  • 正税帳草
  • 出挙帳草
  • 調帳草

正倉院文書には計算途中の紙や書き損じも多く残存する。別途、これを紹介する。

(2)勘文(勘申・勘状):帳簿を照合した結果を記録した文書

  • 勘文
  • 勘申
  • 勘状

中央・国府双方で作成された。

(3)解:提出書類/提出済み書類/添付書類

○○国解

として

  • 正税帳
  • 出挙帳
  • 計帳

などの添付文書。

つまり

解+帳

でワンセット。

(4)牒・移:他部署への通知

:上位→下位、または同格部署間の通知・命令

:部署間の連絡・照会・通知(横方向の連絡)

:上申前の下書き・草案だが、実務では通知文としても使われる場合あり

(A)牒

命令・通知・指示を伝達する文書

中央→地方、国司→郡司、郡司→里長などの往復文書

同格部署間でも使用(例:民部省→造東大寺司)

④ 書式の特徴

  • 冒頭に「○○牒」

  • 「事」字で区切る

  • 朱印を押印(国司牒・郡司牒など)

⑤例

『東大寺文書』所収「相模国司牒』

『正倉院文書』の諸国司牒→調庸の不足・地子の修正などを郡司へ通知

⑤主な使用目的

  • 行政命令

  • 調庸・地子の割当通知

  • 寺領・官田の管理指示

  • 人員動員(雑徭・駅馬)

    など。


    (B)移(うつし)— 部署間の連絡・照会・通知(横方向の文書)

    部署間の連絡・照会・通知を行う文書

    ②上下関係ではなく、横方向(同格部署間)で使われる

    ③中央官司間の連絡で頻出(太政官→諸司、諸司→諸司)

    ④ 書式

    • 「○○移」

    • 牒よりも簡略

    • 朱印は必ずしも必要ではない

    ⑤代表例

    • 『延喜式』諸司式に見える「○○司移」

      • 例えば「大蔵省移」「民部省移」など

      • 他司へ物品・人員・情報の通知

    • 『正倉院文書』の諸司移

      • 造東大寺司→大蔵省への物品受領通知

      • 兵部省→民部省への人員照会

    ⑥主な目的

    • 他部署との情報共有

    • 物品受領・引渡しの通知

    • 人員の異動連絡

    • 調査依頼・回答

    (c) 返抄・返牒

    中央から

    • 不備の指摘
    • 修正要求

    という通知が来たときの返答文書

    (D)勘会関係文書

    監査では

    • 勘録
    • 勘会帳
    • 勘過状

    のような照合作業文書類を作成。

    (E)算用関係

    集計途中の内部資料

    • 算紙
    • 計算紙
    • 集計表

    正倉院文書に残る書き損じ、計算し直しt文書。

    (F)木簡:

    ⇒木簡は紙文書を補完する行政媒体として、運送・収納・物資管理・命令伝達などに利用された。

    • 調物木簡ーー「讃岐国三野郡/海藻六斤」(藤原京跡出土木簡、7世紀末〜8世紀初)
    • 正税木簡ーー「尾張国正税/米壱斛」(平城宮跡出土例)
    • 出挙木簡(出挙稲の貸付・返納管理札)ー「返出挙米/壱斛二斗」(大宰府出土)

    なども行政文書の機能を担当する。


    <16>一つの正税帳が完成に至る手続き


    草案

     ↓
    郡からの報告
     ↓
    集計紙
     ↓
    正税帳案
     ↓
    勘文
     ↓
    修正版
     ↓
    正税帳本
     ↓
    写
     ↓
    中央提出
     ↓
    中央勘
     ↓
    返却・訂正
     ↓
    保存本

    「草案の作成、内部審査、正式文書の作成、控えの保存、上級機関への提出という基本的な行政文書作成の流れは、現代の行政実務にも通じる普遍的な構造を有している。」

    「律令国家の文書作成過程を、草案・木簡・帳簿・関連文書まで含めて今日に伝える例は世界的にも稀であり、とりわけ正倉院文書・出土木簡・古代法令を併せて検討できる日本の史料環境は極めて貴重である。」


    • 草(下書き)
    • 解(添状)
    • 勘文・勘申(監査結果)
    • 牒・移(通知・照会)
    • 返抄・返牒(中央との往復文書)
    • 算紙・集計紙(内部計算資料)
    • 木簡(荷札・納入管理)


    <17>まとめ

    以上を総合すると、国府で作成された紙媒体文書は、行政機能からみれば約14系統の文書群に整理できる。一方、『公式令』『延喜式』に規定される個別の帳簿名・文書様式まで含めると約80種類前後に達し、さらに各文書について本帳・案・写・勘など複数部が作成されたため、国府には常時膨大な量の紙文書が作成・保管・運用されていたと考えられる。

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