2024年1月10日水曜日

大監・少監の読みに関して

 いまさらお浚いをするまでもなく、日本に流通する漢字音の複雑さに手こずるばかりである。

やれ、「推古遺文」の古音、呉音・漢音・唐音・宋音・明音など多彩な名称でよばれる漢字音が併存するからである。

その実例はいちいち掲示しないが、有坂秀世・河野六郎説に全面的に依拠して、呉音は

①主に南朝期の中国大陸南方音が百済に受容され、百済漢字音化し、

だと理解して、卑見によれば、

②白村江の戦い後に、多数の百済渡来人ともに日本列島に流入した漢字音

だと考えている。したがって、その名称も「中国南朝・百済音」が適切ではないかさえ考えている。

参考 ①有坂秀世「漢字の朝鮮音に就いて」『方言』第6巻第5号、昭和11年5月

   ②河野六郎「朝鮮漢字音の一特質」『言語研究』1939 年 33 号 p. 27-53

    「 支 ・脂兩韻 に於 け る四類の區別及 び朝鮮字音 の一致 は軍 に此 の兩 韻 に限      ら れ るのではない 。それは支 ・脂兩韻 に 非常 に 顯 著 に 現 れ て 居 るが、          

     他 の韻 (三等韻)に も一般的 に且つ 原理的 に認 め られ るもので ある。 」

    「朝鮮字音を日本字音と比較すると日本の漢音呉音いつれに近いかと言へば、明ら 

     かに呉音に近い。のみならず、日本の古仮名に於ける区別と一致する所を見れば  

     尚明らかであろう。日本呉音は恐らく南朝音に基礎を置くものであらうから、朝

     鮮字音も南朝音に拠ったと見るべきであろう。」(51頁)


 さて、大宰府の職名である「大監・少監」にしても、通例の読みは「だいげむ・しょうげむ」である。この字音はわが「中国南朝・百済音」に属する。左右馬監は「さうまのげむ」、馬寮監は「めりょうのげむ」。征東将軍の判官が軍監(ぐんげむ)、中衛府の判官が将監(しょうげむ)も同様である。


0 件のコメント:

コメントを投稿