元台北帝国大学助教授、九州大学教授であった福田良輔先生の名は、もはや過ぎし日の日本語研究者としか知られていない。しかしながら、一見しては万葉集の東歌研究とは想定しがたい
高著『奈良時代東国方言の研究』風間書院
を一読すると、その二刀流の名手福田ワールドに瞠目させられる。
その一例。万葉集には、いわゆる防人歌と称される一群がある。
福田先生の調査によると、作者の名が判明できるのは、「同一人で2首の作者が常陸国に3人あるから、81人」(84頁)だという。興味深いのは、その中の35人が「蝦夷部曲出自、夷種系(ただ一代でも蝦夷族と混血した経験ある氏をもふくめていう)と目される部」だという推定である。
この仮説に多くの国文学者が無関心であることは寂しい。不勉強のそしりを免れないだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿