2026年1月18日日曜日

調査用メモ)天平九年(737)パンディミックの典薬寮勘文 ーー流行病(天然痘)典薬寮勘文

調査用メモーー以下に創見などはなく、単なる覚書。

「典薬寮勘申」とは何か

1. 「勘申(勘文)」とは

官司が政務遂行運用上の問題点・原因究明及び対応策・改善案・必要物資の不足などを調査し、上部機関へ報告し、判断を仰ぐための上申書を「勘申」「勘文」と呼ぶ。  現代日本公文書用語でいえば、さしずめ「上申書もしくは具申書(submit a proposal)」「改善提案書」か。

⇒「勘申」の「申」を読むに、卑見によれば「カンジン」ではなく、「カンシン」。

QC活動、TQM、カイゼン文化など現場からのボトムアップ改善型とは異なるが、今風に言えば、現状の問題点⇒原因分析(Why分析、特性要因図など)⇒改善策(実行可能性・コスト・リスクを含む)⇒期待される効果(効率化、品質向上、コスト削減など)⇒実施手順・必要リソースなども含まれていたと想定してよい。個々人のインタビュー記録などが存在しないものの、律令時代の役人たちも能吏であった。


2. 典薬寮が出した勘申=典薬寮勘申

典薬寮は宮医療・調薬・薬園管理を担った機関。

その典薬寮が薬物の不足、諸国からの薬物貢進の遅延、医療制度の運用トラブル

などについて提出した文書が「典薬寮勘申」。

→史料:天平九年(737)の典薬寮勘文は

天平九年の疫病流行(天然痘とされる)に関連し、薬物の不足や供給体制、発生原因と対応策などに関して、典薬寮が太政官へ報告した文書 

『古代医療制度研究史料の一つ


4、 典薬寮勘申が示すもの

古代日本の医療行政の実態

薬物流通・薬園管理・官人への薬給付制度

疫病時の国家対応

律令官司の文書行政の仕組み

→天平9年6月26日太政官符とは

(『類聚符宣抄』収録文書)
1. 背景:天平9年=天然痘パンデミックのピーク
天平7〜9年の天然痘流行は、当時の人口の25〜35%が死亡したと推計される大災害。
737年6月には国家行政が停止するほどの壊滅的状況に陥る。
6月前後の太政官符はほぼすべてが疫病対策・行政維持のための緊急措置。

 5,『類聚符宣抄』に関して

『類聚符宣抄』は 天平9年から寛治7年までの太政官符・宣旨を部目別に分類した法令集。特に天平9年の文書は緊急行政措置の性格を持ち主に以下の部目に集中:
 *惣官(総務)・民部・兵部・治部
特に疫病流行時は次のような太政官符が多い:
① 課役・調庸の免除・延期
疫病で労働力が失われたため、課役の停止や調の免除が頻発。
② 官人の死亡・補任に関する処理
中央官人の大量死により、官職の補任・代行措置が必要。
③ 医薬・典薬寮関係の緊急措置
典薬寮勘申(天平9年)と連動し、薬物調達・賑給に関する太政官符が出される。
④ 地方行政の継続のための特例措置
国司・郡司の死亡や欠員に伴う臨時措置。


**************
6,天平疫病期 行政文書構造モデル

 1. ネットワークの基本構造
天平疫病期の行政文書の三層構造

A. 中央統治中枢(太政官・中務省)
政策決定・符の発給
官司からの勘申の受理

B. 関連官司(典薬寮・大蔵省・民部省・兵部省など)
各種のトラブル・リスクなどを把握し、勘申を作成・提出
太政官符を受けて実務を遂行

C. 地方行政(国司・郡司)
調庸・課役・戸籍・薬物貢進などの実務
疫病による欠員・機能不全が頻発

 2,想定される主要機関ネットワーク図

① 中央(政策決定)
太政官(符の発給)
中務省(文書管理・詔勅の起草)
② 宮内省系(医療・薬物)
典薬寮(医療・薬物管理)
内薬司(宮中医療)
造薬司(薬の製造)

③ 財政・労役系
 民部省
  1,租税(租・庸・調)の管理
  2,戸籍・計帳の掌握(税の基礎データ)
  3,地方からの貢納物の管理
 主計寮(しゅけいりょう)
  1,各官司の経費申請の審査
  2,出納・会計の統括
  3,決算(備品確認など)の実施
兵部省(兵士・防衛)

④地方
太宰府
・ 国司
郡司
郷長(出挙管理・文書及び戸籍管理・調庸徴収)

 3. エッジ(文書の流れ)

① 勘申(官司 → 太政官)
典薬寮 → 太政官
(薬物不足・貢進遅延・医療体制の破綻)
民部省 → 太政官
(戸籍崩壊・調庸不能)
兵部省 → 太政官
(兵士死亡による軍制の崩壊)

② 太政官符(太政官 → 太宰府・官司・国司)
太政官 → 典薬寮
(薬物調達の指示)
太政官 → 太宰府・国司
(課役停止・調庸免除)
太政官 → 民部省
(戸籍再編の指示)
③ 奏上・申請(地方・大宰府 → 中央)
国司 → 太政官・大宰府
(疫病による欠員報告・租庸調の不能及び免除申請)
郡司 → 国司
(死亡者確認、行政不能報告)


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